Diary

にんしん日記

44歳で妊娠、45歳で出産した神戸 海知代の妊娠・出産・子育てせきらら体験記。
妊娠を知った2014年6月6日からまる1年、1日も休まずつづった記録です。

1月11日、うーんのサイン。(生後18日)

 午前2時。だんなが搾乳したおっぱいをそうすけにあげるあいだ、わたしは寝ているように、と、うながされた。ちょっぴり気になるけれど、ここはまるごとおまかせしてみよう。うん、だいじょうぶだよね。と、うとうとしかけたところでだんながわたしをよんでいる。おっぱいをあげてほしいな、とヘルプをもとめている。どうやら、搾乳したおっぱいをのんだあと、ぐずっては泣き、泣きやんでベッドに寝かせると、またぐずっては泣き、を繰りかえしていたようだ。泣く子もだまるカンガルーケアのポーズをためしてみたけれど、今回はまったく効きめがなかったらしい。そうすけくん、どうしたのかな。

 そうすけをよく観察していると、だんだん、泣いていてもほうっておくべきなのか、お相手すべきなのかがわかってきたような気がしてきた。すこしぐずってうす目をあけ、うーんとうなって伸びをする。そんなときに抱きあげると、たとえおっぱいをのんだ直後でもぎゃん泣きにな戻ってしまうことが多い。そこで気づかないふりをしてほうっておくと、ぐずるのをやめて、目をぱちくりしながら両手を握り、うーんとうなって伸びをなんどか繰りかえす。よゆうがあると、ぐずりながらあくびをしたりもする。そんなそうすけにじっと目をあわせると、見られたー、と、ちょっとはずかしそうに視線をはずしたりする。

 うーん、は、うんちのサイン。だんなが発見した法則だ。ぱちくりまばたきしているのがかわいいな、と思って近づいたら、赤ちゃん特有のあまずっぱいにおいがした、という。そうすけは自分の意志で、うんちをしようとしている。見ているとたしかに、うーん、うーん、と、おなかのなかからなにかを絞りだそうとふんばっている。がんばったあとは、ぐっすり眠りにつくことが多い。ひと仕事を終えたあとの充実感、とでもいうのだろうか。ほんとうに気もちよさそうに眠る。このまま1時間から2時間はおやすみタイムをキープできる。もちろんはらぺこのときには、ぎゃん泣きの倍返しになってしまうのだが。

 なにをもとめているのかがわかってくると、子育てはたのしくなる。つぎにやりたいことが事前にわかるので、ムダなくムリなくそうすけをケアできる。そのうえ、とびきりの笑顔をなんども見ることができちゃうわけだ。

1月10日、パパもカンガルー。(生後17日)

 正月休み明けから、だんなは首を長くしてつぎの連休を待っていた。そしていよいよ、待ちに待った今年はじめての3連休がやってきた。そうすけと思うぞんぶんベタつくぞー、と鼻息が荒い。たのもしいと思ういっぽう、どこまで耐えられるのかな、と興味シンシンでもある。昼間のそうすけは、すごいぞー。

 2週間健診でそうすけが順調に育っていることを知って、だんなはなによりもよろこんでいるようだ。わたしもうれしい。不安になるたびに、わたしの話をきいて迷いを解きほぐし、自らの体験をありのままに教えてくれる、家族や友人にはほんとうに感謝している。はじめての子育ては、とにかくわからないことだらけだ。ネットで検索したり、本を読んだり、できるかぎり情報をあつめてみるけれど、やればやるほど選択肢が多すぎて、どれが自分にふさわしいのかわからなくなってしまう。そんなとき、わたしのことをよく知っている家族や友人の的確な助言にどれだけすくわれたことか。気ばかりつよくて中身がヘタレなわたしにつきあって、どんなつまらない質問にもアドバイスをくれる。みんなの言葉がなければ、きょうも迷っていたにちがいない。みんなありがとう。

 さて、そうすけは、すやすや眠っている。朝のそうすけは、ほとんどが睡眠タイムだ。あ、目が覚めた。泣いた。とまらない。どうやら、おむつタイムのようだ。おむつをかえて、すっきりした。泣いた。とまらない。こんどは、おっぱいタイムだ。きょうはなにかと展開が早いなあ。パパがそばにいるぶん、あまえているのかな。おっぱいをのんだらこのまま落ちついてくれるのかな。ああ、やっぱりちがった。あやすと眠りだしたので、ベッドに寝かせた。が、また泣きだした。背中に涙のスイッチがあるみたいだ。昼間のそうすけは、夜よりもずっとあばれんぼう。とうとうだんなも、お手あげになってしまった。

 泣きやまない赤ちゃんに効果的な方法。それは、あのカンガルーケアのポーズだ。胸のうえにそうすけをのせて、背中をゆっくりさすってあげる。こうするだけでほっと安心するらしい。さっそく、だんなもためしてみる。ベッドルームにそうすけをつれていって、ちょっと早めのおひるねタイムがはじまった。すると5分も経たないうちに、すうすう、と、そうすけが気もちよさそうに眠りに落ちていくではないか。そうすけの熟睡につられて、だんなも横で眠りはじめた。それを見てうらやましくなったわたしもベッドに飛びこむ。パパカンガルー、ママカンガルー、子カンガルー。ああ、なんて気もちのいい休日だろう。

1月9日、長寿之泉的飲料。(生後16日)

 午前9時20分に、日赤医療センターへ。そうすけもいっしょだ。3階の小児保健部で受付をすませて、診察室に移動する。きょうは、助産師による2週間健診。赤ちゃんになんらかの問題があった場合にも1か月健診まで長引かせないようにするため、先手先手でチェックをしましょうというわけだ。これはなかなかいいシステムだな、と思う。わからないことがあったら、ついでにきいてしまおう。白いふかふかのおくるみのなかで、そうすけはすやすや眠っている。

 ショートカットのベテラン助産師さんによばれて診察ブースに入った。まずは体重測定から。1日あたり25グラムから30グラム増をめざしましょう、といわれていたがどうだろう。2958グラム。1日あたり53グラム増になっているではないか。そうすけの成長力にびっくりする。わたしはただ、もとめられるままにおっぱいをあげていただけだ。おっぱいはあげればあげるほど、どんどんわいてくるそうだ。日本昔ばなしに出てくる長寿の泉みたいだなあ。どのくらいのんでいるのかわからないので不安なんですが、ときいたところ、気にしているほど気にしなくてもだいじょうぶですよ、という。赤ちゃんの様子を観察していればおのずからどうしてほしいか見えてくるそうだ。うんちもおしっこも、からだにさわったときの印象も、体重のふえ方も。すべて赤ちゃんからのメッセージだ。まだ言葉を知らないそうすけが、からだをつかって話しかけてくる。わたしたちも、それにからだをつかってこたえていけばいい。まさに、ボディランゲージだ。おっぱいは、ほしいだけあたえてもいいらしい。のんでも、のんでも、太らない。そんなのみものが、おとなにもあったらうれしいのになあ。

「お母さんのおっぱいの点検も、しておきましょう」
助産師さんがマッサージすると、母乳がビューッとほとばしった。どこがちがうんだろう。おっぱいってこんなに出るんだ。おどろいていると、さらに助産師さんがアドバイスをくれた。おっぱいをあげるときにはいきなり口にくわえさせるのではなくマッサージをして母乳をちょっと出してからあげるとのみやすくなるそうだ。出せば出すほど、出やすくなる。長寿の泉がますます進化するのだ。あげ方にもバリエーションがあるといいらしい。横抱き、ななめ抱き、フットボール抱きにくわえて縦抱きも教わった。いろいろためしてみよう。

1月8日、ぐっすりのくすり。(生後15日)

 そうすけとふたりきり生活4日め。きのうは、たっぷり眠ったなあ。おかげでぐんと体調がよくなった気がする。いままでからだの調子がよくなかったのは寝不足が原因だったのか、と、あらためておどろいている。薬をきちんとのんでいても、ごはんをバランスよくたべていても、睡眠がしっかりとれていなければ意味がなかったのだ。よく眠るということは、生きるためのきほんなんだと実感。こんなあたりまえのことが、実行できていなかったとは。

 睡眠がたっぷりとれると、気もちにもよゆうが出てきた。そうすけが泣きだしても、すぐに寝かしつけるのではなく、泣いている理由につきあってみようと思いはじめた。赤ちゃんが泣きだす理由はおっぱいだけではない。おむつが汚れているときや、げっぷがたまっているときなどの、不快感を伝えたくて泣くこともある。重ね着しすぎてあつかったり、うす着でさむかったりしたときも、泣いて知らせる。おむつが、きゅうくつなのかもしれない。洋服のタグが肌にあたってチクチク痛いのかもしれない。いや、ムズムズかゆいのかもしれない。新生児のころには、お母さんのおなかのなかから外へ出てきた変化に慣れなくてとまどうことも多い。暗くてあったかいおなかのなかとくらべてみれば、たいへんな変化だ。明るくなったり、暗くなったり。大きな音におどろいたり、たくさんの人の声にびっくりしたり。外の世界になれなくて、お母さんのおなかのなかが恋しくなることだってあるだろう。泣けば泣くほど不安や不快をとりさることができるなら、もっと泣いたってのぞむところだと思う。

 そうすけがいちばんリラックスできるポーズは、わたしもだいすきだ。赤ちゃんをうつぶせにしてお母さんの胸の上にのせて、お母さんの心音や呼吸がよくきこえるように、その胸のあたりに赤ちゃんの耳をぴたっとくっつける。そうすることで、赤ちゃんは落ちついて眠ることができるという。あのカンガルーケアとおなじポーズだ。胸の上のそうすけがわたしの呼吸の動きにあわせてゆっくり上下する。おたがいの鼓動を感じながら息づかいやぬくもりをたしかめる。それがここちよくて、またうとうと眠ってしまいそうになる。

1月7日、パパのおっぱい。(生後14日)

 あれれ、家に帰るとかみさんがリビングで爆睡している。そうすけの要求がはげしかったのかな。というわけで、きょうはだんなが代筆しますね。

 仕事はじめから3日め。いつもであれば、完全に正月ボケもふっとんでいるはずです。なのに、正月のたのしかった余韻からまだ抜けだせません。外出先への移動中や打合せを待っているスキマ時間に、タブレット端末に保存しているそうすけが生まれてからきょうまでの写真をながめています。しあわせな気もちにどっぷりひたりつつ、早くそうすけに会いたいなあ、という想いもふつふつわいてくる。そんな日々がつづいています。会ってまっ先にやりたいことは、沐浴と沐浴後のおへそのおそうじ。これが、たのしみで、たのしみで。

 以前の日記にも書いたとおり、沐浴中のそうすけの気もちよさそうなおやじ顔がかわいくて、かわいくて、たまりません。まったく泣かないし、そればかりかそうすけ自身も満足そうです。産後1か月はおへその消毒をおこたらないようにと助産師さんにアドバイスをもらっていたので、赤ちゃん用の綿棒に消毒薬をひたして、そうすけのおへそをていねいにケアします。そのとたんにぎゃん泣きしますが、それはそれでかわいい。ぎゃん泣きしたあとで眠るすやすや顔は、もっともっと、かわいい。つい酒がすすんでしまいます。

 かみさんはかなりお疲れモードのようで、晩ごはんもそこそこ横になってしまいました。そんな最中にそうすけの大泣きがはじまりました。おむつを見ても異常なし。ということは、おっぱいか。すでに搾乳したおっぱいをあげていたのでわたしの乳を吸わせてみるとどうなるかためしてみました。自分の左の乳首をそうすけの口に近づけてみます。すると、なんとわたしの乳首に吸いついたではありませんか。残念ながら乳は出ないので、ニセモノだと気づいたようです。そこでこんどは、右の乳首をそうすけの口にそーっと近づけてみました。まったく吸いつきませんでした。やっぱり学習したみたいですね。

 そうすけに乳首を吸われてみてはじめて、母親の気もちが理解できた気がしています。なんどもなんども子どもが泣いてよぶなか、何日も寝不足がつづくなかからだもこころもふらふらになって乳をあげる母親の気もちを。

1月6日、食卓の謎解き。(生後13日)

 そうすけとふたりきり生活2日め。まだおっぱいをあげるペースがつかめずにいる。いつ泣いて、どのくらいのんだのか、を記録しているうちに、法則が見つかるだろう、と思っているのだが。なかなかヒントが見つからない。この謎解きは解決するまでにもうしばらく時間がかかりそうだ。年末に書くことができなかった年賀状のつづきを書きながら様子をみてみよう。今年の年賀状の到着が大幅に遅れて、たいへんすみません。ただいま書いております。

 20時すぎ、だんなが仕事から帰ってきた。晩ごはんをつくるのがめんどうだなあと思っているところへ、おそうざいを買ってきてくれた。ありがとう。朝に炊いた玄米があるだけで立派なごちそうだ。食卓におそうざいをならべ、だんなはビール、わたしはジンジャーエールでカンパイ。ごはんがおいしいと会話もはずむ。きょうあった出来事を情報交換しながら15分くらいたったころだろうか、そうすけがわあっと泣きだした。ついさっきおっぱいをのませたばかりなのに、どうしたのだろう。おむつかな。たしかめてみたが、そこにうんちはなかった。おしっこもしていない。ちょっとあやしてあげるとうとうと眠りはじめたので、ベビーベッドに寝かせてふたたび食事をはじめた。するとまた泣きはじめるではないか。うむむむ。なぜだろう。だんなが気づいたように立ちあがって、そうすけをベッドから抱きあげる。そのまま食卓につれてきていっしょに座った。あれれれ、こんどはぴたりと泣きやんだ。3人でいっしょに晩ごはんをたべたかったのだろうか。いまはまだおっぱいしかのめないけれど、そうすけがのぞむならば、3人で食卓をゆっくりかこむのもウェルカムだ。

 夕食のあとひと休みしてから、お風呂タイムへ。だんなが沐浴させる。そうすけはうつぶせになって背中を洗ってもらうのがこわいみたいで、ぐいぐい身をよじりながらいやがる。こういうときにパパの大きな手があるとほんとうにたすかる。だんなも沐浴させるのをたのしみにしているので、需要と供給が一致してありがたい。ひとっ風呂あびてミルクをぐいぐいのんだとたん、そうすけはぐっすり眠ってしまった。明け方4時までたっぷり眠って、ほっとひと安心。

1月5日、そうすけの挑戦状。(生後12日)

「いってらっしゃーい」
「なるべく早く帰ってくるね」
きょうから、だんなは仕事だ。だんなが出かけている8時から20時くらいのあいだは、そうすけとふたりきりになる。正直いってドキドキだ。ちゃんとお世話できるのだろうか。2日前くらいからシミュレーションしているつもりではいるがまったく自信がない。もう本番なのか、と気もちがあせる。いつどこで大泣きしはじめるだろう、と思うとおっかなびっくりだ。それでも母親なんだから、平気な顔をしてどっしりかまえていたいものだ。できるだろうか。

 だんながいなくなってから、そうすけはすぐに泣きはじめた。おなかがすいているにちがいない。さっそくおっぱいタイムだ。いままでは右のおっぱいと左のおっぱいを交互にあげていたけれど、のむ量がふえてきたのか両方ほしがるようになってきた。たのもしい、と思ういっぽうで、きのうまで組みたててきた方程式が見事にリセットされてしまったことにあせりだす。いつ授乳をしてどんな配分で搾乳したおっぱいをあげるのがいいのか、すっかりわからなくなってしまった。こうなったら、動物的カンをもとにそうすけのメッセージを読みとっていくしかない。名探偵におまかせあれー、と盛りあげてみる。

 おっぱい以外にも、さまざまな挑戦状がそうすけからとどいた。まずは、口からぶくぶく出るあぶく。はじめは気にしていなかったがふいても、ふいても、とまらないのでおそろしくなってきた。ネットで検索してみるとわたしのほかにもたくさんの新生児をもつママが心配しているようだ。これは、カニさんよだれとよばれるもので、よだれが出やすいこの時期にはよくあることらしい。カニさんみたいでかわいいねえ、とほのぼのしながら見まもっていてもだいじょうぶ。つぎに、とまらないくしゃみ。アレルギー反応をうたがってしまいそうだが、たくさんくしゃみが出るからといって、この年齢でアレルギー体質と決める根拠にはならないそうだ。赤ちゃんの鼻の粘膜はデリケート。冷たい風や、ちょっとした刺激、温度の変化だけでも、くしゃみを連発してしまう。そうすけのくしゃみはぶわっしょい、と豪快で、たとえば、ちっちゃいおじさんがたちまち等身大のおやじに変身しているようだ。そして、くるしそうなしゃっくり。おっぱいをのんだあとなどによく見られるが、これは、食道や胃への刺激が横隔膜に伝わって横隔膜が反射的にけいれんをおこしているためだそうだ。しゃっくりそのものには害はなく赤ちゃんにとってはくるしくないので、心配しなくてもいいらしい。とはいえ、見ているとなんとかしてあげたくなってしまう。これもきっと、母をひきつけるいのちのしくみ、のひとつなんだろうなあ。

1月4日、いのちのしくみ。(生後11日)

 そうすけを見ていると、あっという間に1日がすぎてしまう。表情やしぐさのバリエーションが、どんどんふえてきているのだ。上目づかいでおねだりするそうすけ、ごきげんなそうすけ、セクシーポーズのそうすけ、ちっちゃいおじさん顔のそうすけ、反省することしきりのそうすけ、バンザイしてリラックスするそうすけ。日々の体験を思うぞんぶんたのしんでいるようだ。見ているわたしたちまで、たのしくなってくる。生まれてきてほんとうによかったなあ。

 おもしろリアクションのベスト3を、ならべてみると。
ひとつめは、沐浴をしているときのそうすけ。はじめのうちは、はだかになるたびに泣きじゃくっていたけれど、お風呂の気もちよさにすっかりめざめてしまったようだ。湯につかった瞬間に見せるちっちゃいおじさん顔に、いつも笑わされる。ほほおおぉ、と湯を愛でるような表情。はあ、ビバノンノ、と合いの手を入れてあげたくなる。わたしも大のお風呂ずきで何時間でも湯船につかっていられるタイプなのだが、そんな母親の血をひいているのかもしれない。
 ふたつめは、おっぱいをおねだりするそうすけ。いままではおっぱいが目の前にあるだけですぐにかぶりついていたが、このごろはちょっとちがう。乳首を近づけるといったんは顔をそむけて気のないそぶりをする。だんなやわたしが、どうしたのかなあ、と心配しはじめたところで、がばっとダイナミックにかぶりつく、というわけだ。こんな巧妙なじらしワザをどうして身につけたのだろう。顔をそむけた瞬間に舌なめずりをして挑発することもある。
 みっつめは、おむつ交換をオーダーするそうすけ。うんちやおしっこの状況によって、ビミョーに表情をかえてくるところがおもしろい。うんちのときにはふんばるときから泣いてアピールする。そうすけ、いきまーす、と教えてくれているようだ。おしっこのときは、してしまったあとで報告をするように泣き声をあげる。うんちのときはおしっこのときよりも、泣き顔がわかりやすい。情報処理をどこかで学んできたみたいだ。参考にさせてもらおう。

 まだまだこれからも、いろいろな変化が見られるにちがいない。そう思うと24時間目がはなせなくなる。もともと、そんなふうにしくまれて生まれてくるのかな、赤ちゃんって。すばらしい、いのちのしくみ、だと思う。

1月3日、かわいい進化。(生後10日)

 きょうは、来客もなく、親子水入らずの日。そうすけは、ひと眠りするごとに成長していく。1日1日だいじに、だいじに、すごそうね。そうすけのベビーベッドは、リビングのソファーのとなりにおいてある。リビングからも、ダイニングからも、しっかり見える場所だ。だんなは、そうすけのあたまのかたちを気にしていて、寝かせるたびにあたまを左右交互に向けている。吸引分娩だったこともあって、そうすけのあたまはちょっぴり縦長にゆがんでいる。だんなも自分の後頭部が絶壁気味なのを、おとなになったいまも気にしているという。退院後2日めまでは、ソファー側に首を向けるとなんともなかったが、人のいない反対側に首を向けるとさびしいのか、よく泣いていた。それが、2日後の夕方ごろからだろうか、ソファーの反対側に向けた顔が、いつのまにかソファーのほうに向いているのを見てびっくり。逆にダイニングにいると、反対側に顔の向きをかえて目が合うことも。まだ、首もすわっていないうちから、どんどん動きはじめている。そんなそうすけがたのもしい。見るたびに、はっとさせられる。

 もうひとつ、たのもしいこと。それは、日に日に進化していく、そうすけとのコミュニケーション。おむつを交換するときには、かならずといってもいいくらい、そうすけは泣いている。服を脱いだらぶわっと冷たい空気が寄せてくるのとおしりふきのひんやり感をいやがっているのだろう。おむつをとりかえるたびにぎゃん泣きしているが、いちいち気にしないことにしている。が、進化はいきなりおとずれた。沐浴の前にうんちをしていたので、おむつをとりかえることにした。やっぱりぎゃん泣きだ。よしよし、と、あやしながら沐浴タイムへ。おろしたての服に着がえたそうすけは、ごきげん、ごきげん。さらに風呂あがりのおっぱいタイムで、ゴクラク、ゴクラク。授乳が終わると背中をかるくたたくようにしてゲップを出す。しかし、ばぶっと出てきたのは、大きなおならだった。この大きな音からすると、うんちもセットになっているにちがいない。せっかくお風呂に入ってからだをきれいにしたばかりなのに、あーあ、もったいないなあ。ふたたびおむつタイムへ。いつもならここでぎゃん泣きがはじまるのだが、今回は様子がちがう。ベビー服の袖にあたまをかくして、必死に泣くのをがまんしているのだ。ああ、やっちまった、と反省しているようだ。自責の念を感じているのだろうか。そういえばおならをした瞬間にも、どうもすみません、といいたげな目をしていた。いじらしいよなあ、そうすけ。

1月2日、寝ても、覚めても。(生後9日)

 あらためて、あけましておめでとうございます。10日間、日記をだんなにあずけているうちに、年が明けてしまいました。ごめんなさい。そして、ほんとうにたすかりました。ありがとう。おかげでたっぷりリフレッシュできました。こんなに長い休みをとったのは社会人になってはじめてかも。結婚式の前日も、家族みんなで食事をしよう、と、わたしから誘っておきながら、編集室にカンヅメになって午後10時まで待たせたり。父が入院していたときの看護も、仕事のない週末や出張ついでに新幹線で行き来したり。自分のことばかり優先していたように思う。でも、そんな生活の日々ともさようならだ。

 いまは、24時間おっぱいのことばかり考えている。寝てもおっぱい、覚めてもおっぱい。わっしょい、わっしょい。毎日がおっぱい祭りだ。そうすけは、うれしいことにおっぱいをたいへんじょうずにのんでくれる。のみたいときにのみたいだけ、おっぱいが出るといいのになあ。出産してからまだ体調が万全でないため、おっぱいの出る量にもばらつきがあるようだ。搾乳をして1回ぶんにのむ量がかたよらないように心がけている。それでも理想のバランスになるまでにはまだまだ修行が必要だ。たかがおっぱい、されどおっぱい。

 午後1時、退院後はじめてのそうすけの健康チェックをうけるため日赤医療センターへ行った。おっぱいの状況をはじめ、おしっこやうんちの出ぐあいも報告して、体重を測定した。退院時から66グラムふえていた。30日午後に退院したからちょうど3日め、1日あたり22グラム増だ。助産師さんのアドバイスによると、1日あたり25グラムから30グラム増にしていきたいとのこと。搾乳の量をふやしましょう、とアドバイスされてこまった。おっぱいが3つにふやせたら、いいんだけど。ちょっとずつ頻度をふやしてみよう。

 健康チェックのあとわたしが内科の受診をうけるため、そうすけを産科のナースステーションにあずかってもらって救急外来の受付へ向かった。年明けの救急外来は診察を待つ老若男女でごったがえしていた。けっきょく、受診までに2時間半、薬をもらうまでに30分かかった。それでもこれで健康が手に入れられると思えば待つのもウェルカムだ。いまわたしは、膀胱炎をなおすための抗生剤と痛み止め、貧血を予防する鉄剤、甲状腺ホルモンの分泌低下をおぎなう薬、むくみに効く漢方、胃薬、便秘薬をのんでいる。入院をしたのもはじめてだけど、こんなにたくさんの薬をのみつづけているのもはじめてだ。出産するまでは体力に自信があったが、実際に産んでみてやっぱり年齢を感じずにはいられなかった。コンディションの回復にはもうすこしかかりそうだ。