10月15日、いいわけしたい。(妊娠28週6日)

 全国吹奏楽コンクールが近づいてきた。高校の部は10月26日。前半と後半にわけて、まる1日かけておこなわれる。吹奏楽ファンにとっては、年に一度の一大イベントだ。わたしも、ほぼ毎年かかさずかよっている。中学から大学のころは出場をめざしていたが、いまは、もっぱら観客のひとりとして参加している。このコンクール、正確には全日本吹奏楽コンクールとよばれるものでアマチュア吹奏楽団体だけが出場できる。中学、高校、大学、職場・一般の4部門にわかれておこなわれる。なかでも高校の部が、わたしはだいすきだ。たった12分の演奏時間にささげる青春。高校生たちのひたむきさを目のあたりにするたび、胸があつくなる。コンクールをめざす彼らを何か月もかけて密着取材しているテレビ番組もかならず録画して見ている。見ながら、泣いている。泣きながら、自分の10代を思いだしている。それを、毎年くりかえしている。

 高校の部のチケットは、手に入れるのがたいへんだ。指定席制でしかも抽選になっている。抽選にもれると、ネットオークションやチケット売買サイトでチャンスを待つことになる。ここ数年、抽選にはずれて、オークションで何倍にも値上がりしたチケットを入手していた。そこまでしても、行くだけの価値があると信じている。それが、わたしにとっての全国コンクールなのだ。ところが、なんと、今年は、前半の部の入場券が抽選に当たった。うれしい。いつもいっしょにかよっている後輩にすぐ連絡をとった。後半の部の入場券だけオークションで入手すれば、だいじょうぶだね。そう話していた。なのに、今年はなぜか思ったとおりに落とせない。これ以上は払えないよ、という金額をかるく超えてしまうのだ。いままでにない違和感。見えざるちからのしわざだろうか。

「そうすけが、ムリしないでね、って、おねがいしているんじゃないの」
と、だんながいう。え、そうなの。そうなのか。そうだったりするのかも。冷静に考えると、だんだんそんな気がしてくる。コンクールがおこなわれる名古屋国際会議場に9時に着こうとすると、6時には家を出ることになる。終わってから夜ごはんをたべずに新幹線にのったとしても、帰りは22時をすぎるだろう。やっぱりきついかも。このところ、おなかが大きくなってきて、背中がすぐに痛くなるのも気になる。あのシートに、ずっと座っていられるかな。しかも週明けにはコピーライターズクラブのイベントがひかえているじゃないか。運営係を手つだう約束をしていたよなあ。コンディションをととのえておいたほうが、いいんじゃないの。1日かけて考えた、結論はこうだ。チケットは、この秋に華麗なる転職を決めた後輩にプレゼントしよう。お祝いにすれば、あきらめがつくはず。