11月24日、祈願書を出す日。(妊娠34週4日)

 朝起きると、だんなが書斎をかたづけていた。ダンボール箱に本がぎっしりならんでいる。来週の日曜日、書籍の買取サービスがきたときに引きとってもらうぶんだ。そうだ、わたしも整理しなければ。あっという間に週末だ。
「ほらほら、早く祈願書を書かないと」
「あ、そうだった」
「はい、書いて、書いて」
「ごめん、ごめん」
きょう11月24日は、大切な日だ。祈願書を書いて参拝する日。神さまへのおねがいごとをエントリーするチャンスの日、なのだ。日本中の神さまがあつまってきて、人間たちのおねがいごとをかなえるかどうかの会議をする。そのための企画書を作成して提出しなければならない。お正月に神社へ行って祈願するのはじつはまちがい。このタイミングにおねがいしたことへの、許可書をもらいに行くのが、初もうでのそもそもの趣旨なのだ。そう思うと気合いが入るが、わたしはすでに寝坊してしまった。本来、起床は6時まで、部屋を換気して朝日を15秒あびる。新しい下着と服に着がえる。9時に北を向いて、祈願書を2通書く。もう9時をすぎてしまっていた。とほほほ。だんなは、風呂で身を清めて部屋もきれいに整とんしていた。気をとりなおして急いで書こう。

 はじめに、神さまに日ごろの感謝とお礼を伝えて、かなえたい夢を箇条書きにする。さいごに、がんばります、と決意表明をして、住所、氏名、生年月日を書けばできあがり。祈願書を封筒に入れて、表に、平成27年祈願書、と書く。準備ができたらさっそく神社へ。途中で書いた封筒をもってくるのを忘れたことに気づき、だんなが走ってとりに帰る。迷惑をかけっぱなしで、すみません。神前での拝礼にもルールがある。2回深くおじぎをする。2回柏手をうつ。自分の住所と名前、祈願書の願いをとなえる。1回深いおじぎをして、おしまい。もってきた2通の祈願書は自宅にもち帰って、1通は神棚にそなえるか、タンスや机の引きだしに入れる。もう1通はカバンなどに入れてもち歩くといい。これで来年の準備は万端だ。あとは初もうでのときに神さまから、この祈願でこのまましっかりがんばりなさい、と応援してもらえばいいのだ。

 だんなは、わたしがどんな祈願を書いたのかは知らない。わたしも、だんながなにを書いたのかは知らない。でも、おたがいすぐにわかってしまった。参拝が終わって一斉に、おなかのなかのそうすけに話しかけたからだ。
「そうすけ、元気に生まれてくるように、神さまにおねがいしたからね」