12月18日、いちばん身近な奇跡。(妊娠38週0日)

 正午、コピーライターズクラブの幹事会に出席するため、表参道の事務所へ向かった。11時から大崎広小路にある保育園の見学会があったので、完全に遅刻してしまった。見学会が終わって時計を見ると、11時59分。どこでもドアがあったら間にあうのに。タクシーにのるか一瞬迷ったが、きっと電車のほうが早いだろうと思い、駅をめざして歩いた。ウォーキングにもなって一石二鳥だ。保育園の見学会もきょうでさいごになる。これ以上候補を出しても申請できない、という数まで保育園を見た。あとは、考えて決めるだけだ。

 幹事会が終わって、今年中に確認するものはすべて確認して、すがすがしい気もちになる。みんなにたっぷり、おなかをなでなでしてもらった。おおげさかもしれないが、思いのこすことはない心境だ。なかよしの先輩女子が、もしよかったらおさんぽ&お茶しようよ、と誘ってくれた。18時に新宿で予定を入れているそうなので、新宿までぶらぶら歩くことにした。途中気になる店をのぞいたりしながら、気の向くままに歩いた。2時間ほどかけて新宿まで歩きながら、いろいろなことを話した。先日の衆議院選挙のことや、先輩が買った新しいソファーのことや、大学時代のゼミのことや、仕事やプライベートのこれからのことや。わたしも先輩も、仕事をしながら長いあいだ不妊治療をしていた。そして治療を途中でやめた。いま、わたしは妊娠している。先輩は、夫婦ふたりでの生活をたのしむことに決めた。どちらも体験できるならこんなにすばらしいことはないだろうが、子どもを産める期間はそこまで待ってはくれない。なにかを選んで、なにかをあきらめなければならないこともある。なのに、子どもを産むか産まないかについては自分で選択することができない。もどかしいかぎりだ。

 不妊治療をどこでやめるのか決めるのは、むずかしい。治療をやめたら自然妊娠した、というケースもあるけれど結果論にすぎない。不妊治療と仕事の両立もたいへんだが、パートナーから理解と協力を得るのもひと苦労だ。妊娠を女性ひとりひとりの問題としてとらえているかぎり解決することはできないだろう。妊娠はいちばん身近な奇跡だ。と、いまあらためて思う。