12月9日、ママはしあわせ。(妊娠36週5日)

 12時半、恵比寿駅近くのレストランで待ちあわせる。前の会社でお世話になったボス夫妻と同期のコピーライターと4人でランチだ。うまいもんにくわしいボス夫妻が選んだ、肉がおいしいと評判の店にせいぞろいした。同期のコもわたしもワクワクしっぱなしだ。同期のコピーライターは1つ年下の女性なので、40代だが同期の“コ”とよぶことにしよう。彼女はいま12歳の息子さんがいる立派な先輩ママ、ボス夫妻には子どもはいないが、いつも世話しているおなじ12歳の姪っ子さんがいる。話題はやっぱり子育てのネタになる。

「中学受験、どうするの」
「本人とも話したんだけどまったく興味がないのでやめました」
「そうかー。姪っ子はうけるよ」
「やっぱ、そうですよね」
「えっ、中学受験ってあたりまえなの」
「都内はけっこう多いよ」
「いじめとかこわいし。いい環境で学ばせたいからねー」
「多感な時期だし」
たしかに、おなじ目的をもつ学生があつまったほうが人間関係などのトラブルはすくなそうだ。といっても、まだ12歳。そんなに若いうちにカテゴライズしてしまっていいのかな。選択肢をひろげるために受験するんだ、とボスの奥さんはいう。やりたいことをやるための受験。同期のコもそのつもりで息子さんを塾にかよわせていた。中学受験をやめると決めるまでにも、息子さんとのあいだでいろいろな葛藤があったんだそうだ。
「息子さん、なにがやりたいの」
「ゲーム。いま城をつくるゲームに夢中になっているんですよねー」
「親に似て、クリエイター志向なんだね」
「建築とかデザインとかもいいなあ」
「たのしくなってくるよね」
「いっしょに城を見に行ったりしてるの?」
「このまえ、だんなといっしょに皇居に行ったんですー」
「おおっ、江戸城行ったんだー」
休日に皇居をおさんぽする家族、か。すごくしあわせそう。親になるのはたいへんだ、というけれど。息子さんのことを話している顔は笑っている。