3月28日、貴重な時間。(生後94日)

 コピーライターの友人ふたりとレストランで待ちあわせる。ランチをたべようと約束していた。家からすぐの店を提案したら、そこにしよう、と賛成してくれたのがうれしかった。ちょっと早めに家を出て、きてくれてサンキューの気もちをこめたクッキーセットを買って、店へむかった。ふたりは先に店にいた。ごぶさたー、と声がはずむ。出産してから会ったのは、はじめてだ。

 ふたりとも、会わないあいだにいろいろな経験をしていた。お世話になった恩師と別れていたり、仕事場の環境がかわっていたり。体験をとおしてどうかわったかを、あらためてたしかめあった。どのような体験をしたかは人それぞれだけれど、体験をどのようにとらえたかはたがいが共有して参考にできるし、それが偶然もとめていたものだったりもする。わたしはだんなと子どもがいる、ふたりは結婚していない。しかし、根本的な考え方や感覚はかわらない。その感覚や気もちを、いまたがいにわかちあえるのはすばらしいことだと思う。これからもこんなふうに年を重ねていけますように。

 ちょっと遅れて、だんながそうすけを連れてやってきた。だっこひものなかでそうすけは恥ずかしそうにしている。ただ眠いだけなのかもしれないが。きれいなおねえさんにかこまれて、緊張しているようにも見える。そうすけくん、こんにちは。そうすけくん、はじめまして。ふたりに声をかけられて顔をあげたそうすけに、わっと歓声があがる。この瞬間が、そうすけはだいすきだ。くすぐったそうに笑いながら身をよじる。だんながとなりにすわってオーダーをしようとしたら店の人が、ごめんなさい小学生未満は入店おことわりなんです、と申しわけなさそうにあたまを下げた。えっ、そうだったの。

 そうすけとだんなは、入店して5分ほどで帰ってしまった。あっという間のごあいさつだったね、と別れを惜しみながら、ランチとお茶とおしゃべりをたっぷりたのしんで解散した。いつもかよっているあの店に、親子3人でかよえるようになるには、あと6年もかかるのか。ものすごくとおい先のように思える。それくらい、変化の多い密度の濃い毎日をすごしているのだ。