3月31日、お花見さんぽ。(生後97日)

 目黒川沿いの桜が満開だ。そうすけといっしょに、見に行こう。あいかわらず声は出ないが、のどの痛みはずいぶん治まった。せきが出ないように、のど飴をたくさんカバンに入れた。おむつに、おしりふきに、ごみを入れる袋に、そうだフェイスタオルも2枚もっていこう。そして、あたたかくなったらやってみたいと思っていたこと。そうすけとおそろいのパーカーを着る。ほんとうは、だんなとペアルックのそうすけが見てみたいと思っていたのだが、お先に体験してしまおう。そうすけがすきなパイル地の素材は肌に吸いつくようになめらかで、風にあたるとひんやりして気もちいい。おさんぽに、ちょうどいいのだ。

 ベビーカーをカタカタとゆらしながら、目黒川沿いを歩く。たくさんの人が花見にきている。きょうが平日だったのを忘れそうになる。桜の木の前で写真を撮るカップルがいて、公園の芝生にすわっておべんとうをたべる親子がいて。川の上では、お花見クルーズの船が観光客でにぎわっている。なんと気もちのいい午後だろう。そうすけもうれしそうだ。ちょっと写真を撮ってみようか。デジタルカメラをとりだして、そうすけに合図をする。もちろん返事はないけれど、撮って撮って、といっているような表情だ。ベビーカーのほろを外して、顔がよく見えるようにした。まぶしそうにしていたが、笑っている。

「そうすけ、きれいだねえ」
「そうすけ、たのしいねえ」
声が出ないぶん、ゆっくり口を動かして話しかける。読唇術みたいにふしぎな状況だ。こんな日に声が出せなくて、残念。それでも、おどろきやよろこびをちゃんとわかちあっている気がしてくるから、ほっとする。家に帰ってからのそうすけを見ていると、たのもしくなった。いつもなら外出したあとは疲れて泣きだすが、きょうはもどってからもしばらく興奮さめやらぬ様子で声をあげ手足をバタバタさせていた。あしたの午後も、いっしょにおさんぽしようね。