3月5日、復職へ向けて。(生後71日)

 保育園も無事に決まり、いよいよ復職へ向けて準備をはじめる。4月中に入園すること。原則として入園日が復職日となること。区が定めたこれらのルールをふまえ、保育園とも相談して4月30日をその日に決めた。月齢が小さいので1日でも成長してからのほうがいいだろう、とタイミングを話しあった。復職日を決めたら、その2か月前から1か月前までのあいだに上長と面談をして、配属や勤務形態などを確認する。まずは面談の日時を決めるため、上長にメールを送った。メールのかしこまった文章と、それを書いているわたしのゆるゆるの恰好に、ギャップがありすぎてつい苦笑してしまう。出産前からのび放題の髪をたばねて、ブラトップ1枚だ。よくいえばアスリート、ありのままにいえば原始人。そうすけからのオーダーがあればいつでもおっぱいを差しだせるように、常にスタンバイしている。退院して家にもどってからは、ほぼ毎日こんな姿ですごしてきた。それが180度かわることになるのだろう。そうすけは、つきあってくれるかな。不安はつきないけれど、はたらくママみんながのりこえてきた道だ。ふたりめの子どもを出産した先輩ママが教えてくれた。
「あずけてよかったって思える日が、きっとくるよ」

 子育てをしながら仕事をするのは、人生ではじめての体験だ。いままでによく似た経験はなかっただろうか、と、あたまのなかを探してみる。部活動にはげみながら、受験勉強をがんばる。どっちもいつも気が抜けないところは似ているかも。恋愛に夢中になりながらも、翌朝提案の企画に集中する。どっちも大事に育みたい気もちは、似ているかも。が、なにに置きかえても正直なところ実感がわかない。半年後のわたしは、ちゃんと両立できているのだろうか。

 上長から返事がきた。面談ですが、来週の午前中でいかがですか。都合のよい曜日を教えてください。と書かれてあった。たしかに復職が目の前に迫ってきたのを感じる。週間天気予報をたしかめて、天気がよさそうな12日と10日を希望した。そうすけといっしょに行こう。子どもを連れていってもいいですか、とたずねたら、上長がそうすけのぶんの入館証を手配してくれた。こんな機会はほかにないのでいまからドキドキ、たのしみになってきた。