5月12日、かわいいねえ。(生後139日)

 そうすけといっしょにいると、とにかくいろんな人から声をかけられる。道ばたで、お店で、駅で、電車で。こんな体験は、いままでになかった。赤ちゃんのもつパワーには、ほんとうにおどろかされる。現代人はコミュニケーションが希薄だなどといわれたりするが、そんな心配もどこ吹く風だ。みんな、ただ声をかけるタイミングを待っていただけなのかもしれない。ありがとうの気もちで胸がいっぱいになる。こんな世界に生まれてきてよかったね、そうすけ。

 声をかけてくる人は、圧倒的に経産婦が多い。家族連れのママやおばあちゃんは、ほぼ100%といってもいい。自分の体験と重ねあわせてたくさんのことを思うのだろう。目を細めて、自分の子どものように話しかける。
「かわいいねえ」
「何か月?」
「いまが、いちばんいいときねえ」
きょうもエレベーターのなかで、知らない女性から声をかけられた。わたしとおなじくらいの年だろうか。そうすけを見ながら、しきりに、いまがいちばんかわいいときなのよねーと連発している。大きなお子さんがいるのかな。
「うち、8歳の娘がいるんだけど、口が達者で」
「おしゃまさん、なのかな」
「いってほしくないこと、どんどんいっちゃうのよー」
いってほしくないことって、どんなことだろう。と、つい気になってしまったがそれは教えてもらえなかった。女の子だから、美容とかダイエットの話だったりするのかな。わたしからすれば、おなじごはんをたべることができるのも、いろんなおしゃべりができることも、うらやましいかぎりだ。お母さんと対等に話しているそうすけが、いまはまだ想像ができない。ごはんをたべたり、おしゃべりをしたり、早くできるようになりたい。そう話すと女性は、はっとした顔を見せたあとで、やっぱりこのころがいちばんかわいいよーといって笑った。

 若い男性から声をかけられたこともある。とんかつ屋さんの店員のおにいさんが、そうすけをうっとり見つめながら、だんなとわたしに話しかけた。
「いいにおい。赤ちゃんのにおいですね」
「赤ちゃんのにおいですか」
「赤ちゃんにしか出せない、いいにおいがあるんです」
おにいさんも先日パパになったばかりだという。そうすけとずっといっしょにすごしていると気づかないにおいを、パパになりたてのおにいさんは感じているのかもしれない。ミルクだけじゃない、赤ちゃんのにおいなんだという。