5月17日、産みのくるしみ。(生後144日)

 昼前にふたたび、母と兄と義姉がやってきた。もともと、きょうは来る予定ではなかったが、きのうのそうすけにすっかりこころをうばわれて、もっと会いたい、だっこしたい、と思ってやってきたそうだ。その気もち、よくわかる。そうすけといっしょにいると、夢中になるあまり時間の感覚がすっかりマヒしてしまうのだ。あいかわらずそうすけはおしみなく笑顔をふりまいて、ひとりひとりにハッピーオーラを提供していた。母は午後早めの新幹線で京都へもどりたいのにといいながら、兄も義姉もあしたから仕事があるのできょうはなるべくゆっくりしたいのにといいながら、ぎりぎりまでいっしょにあそんでいた。

 午後、家族が帰ってしまうと、部屋が静かになった。さびしくなったのだろうか、そうすけは泣き虫になってしまった。だっこしていないと、泣いてばかりいる。すきな音楽を流しながらおっぱいをあげても、おむつをかえても、たちまちわっと泣きだしてしまう。しばらくしたら疲れて泣きやむだろうとベビーベッドに寝かせたら、枕を引き裂かんばかりに両手でぐいぐい引っぱりながらわんわん泣き叫んでいる。こうなったらもう、だまって見まもるしかない。

 夜、終日研修に出ていただんなが帰ってきたので、そうすけの様子を話していると、それってさびしいだけじゃないかも、便秘でおなかがくるしいのかもしれないよねという。そうだ、この2日間いちども出ていない。たしかに、枕を両手でぐいぐい引っぱりながら、顔を真っ赤にして、うんちをふんばっているようにも見える。そうすけも、おとなたちの相手をしながら、彼なりにプレッシャーを感じていたのだろうか。だとしたら、見すごしてしまってごめんね。おなかをのの字でさすりながら、うんちを待った。そうすけのごきげんななめは、翌朝までつづいた。5時ごろにおっぱいをあげて、横になって休むことにした。

 リビングから、だんなの声がきこえる。うれしそうだ。見にいくと、おむつを交換しながら、うんちが出た、いっぱい出た、と興奮気味に教えてくれた。おっぱいをあげて、わたしが寝室に入ったすぐあとに、ばぶっ、と軽快な音をたてておとずれたらしい。それもそうすけ史上最大のボリュームだったという。よかったなあ。そうすけは、おしりをふいてもらいながらおだやかに笑っている。産みのくるしみを克服して、さらに自信をつけたようにも見える。