5月25日、張りきるおっぱい。(生後152日)

 午後2時28分。大きなゆれを感じた。携帯電話の緊急地震速報のアラーム音が一斉に鳴りはじめた。仕事場にいたメンバーがあわててテレビをつけて、ニュースを確認した。茨城県南部で震度5弱、と出ている。東京も震度4だった。けっこうゆれたね、などといいながら、10分もしたらみんななにごともなかったかのように仕事をつづけていた。そのとき、わたしはある異変を感じていた。おっぱいだ。おっぱいが張って、痛くてたまらない。危険を察知すると、大切ないのちをまもろうとおっぱいもがんばるのだろうか。いまそうすけは保育園にいるのであげられないのだが。搾乳をしようかどうか迷いながらも、けっきょく仕事場を出るまでの時間をだましだましでのりきった。帰りがきつかった。おっぱいの痛みのあまり、電車の吊り革を握りながら歯を食いしばり猫背になっていた。きょうはだんなのほうが仕事の帰りが早いので、だんなが保育園へ迎えにいってくれたのでたすかった。家に着いたらすぐ、おっぱいをあげよう。

「ただいま。そうすけ起きているかな」
「うん、いまちょうどミルクをのみ終わったところ」
「そっかー。じゃあ、おっぱいいらないよね」
「あげてみれば」
「かけつけおっぱい、か」
「とりあえずおっぱい、だ」
そうすけをだっこすると、ちょうだいという顔をしている。その上目づかいがうれしくて、かわいくて、ぎゅーっとした。おっぱいをあげたら、やっぱりおなかがいっぱいだったのだろう、のんだまま眠りはじめてしまった。首がぐらんぐらんするほど深く眠りはじめてしまったので、ベビーベッドに運んで寝かせた。それでもまだ、おっぱいが張っている。搾乳して出しきることにした。さっきそうすけがのんだあとなのに160ccも出たのでびっくりした。以前ならがんばっても60ccくらいしかとれなかった。おっぱいも成長しているんだなあ。

 おっぱいが張って痛いとついつい、自分でぜんぶ搾りだしてしまいたくなるけれど、搾りすぎには気をつけたほうがいいらしい。しぼり出したぶんも赤ちゃんが必要としているんだと、おっぱいがカンちがいをしてしまう。そうするとよけいに母乳がつくりだされて、張りかえしがきてしまうことも多いそうだ。おっぱいが張りすぎて赤ちゃんが吸いづらいときにすこし搾乳してやわらかくする場合や痛みがとまらないとき以外は、がまん、がまんだ。