5月4日、空気を読む男。(生後131日)

 いい天気だ。そうすけの体調もだいぶよくなってきたので、ちょっと遠出をすることにした。遠出するといっても、大崎から川崎までの電車で15分の距離なのだが。だんなが後輩から、川崎のショッピングモールでかわいいベビー服がリーズナブルな価格で手に入る、ときいてきた。こういうおトク情報には、だんなもわたしも目がない。まずは行ってみないと。午後1時、電車が比較的空いている時間をねらって移動することにした。電車のドアのそばで、そうすけをベビーカーから出してだっこして外の景色を見せると、目をまんまるくして流れゆく風景を見ていた。はじめての体験にワクワクしている。

 ショッピングモールは、たくさんの人でにぎわっていた。ベビーカーで来ている親子連れの多いこと、多いこと。ぶつからないように気をつけてすすむだけでも、せいいっぱいだ。ゆっくり数店まわって、そうすけの夏用の服を何枚か購入した。ちょうどおやつの時間になったので、おっぱいをあげることにした。授乳室も大にぎわいだ。おっぱいをあげて、おむつをかえて、ついでに近くにあった体重計で体重をはかったら、のむ前よりしっかりふえていた。えらいぞ、そうすけ。そうすけも満足そうにベビーカーで昼寝をはじめた。親のわたしたちも小腹がすいたので、おいしいおやつをいただくことにしよう。

 ガレットとクレープの店に入った。ウエイトレスさんが2人がけのテーブルをすこしずらして、隣りのテーブルとのあいだにスペースをつくって、そこにベビーカーを置かせてもらった。隣りのテーブルには、小学1年生くらいの女の子とおじいちゃん、おばあちゃん、ひいおばあちゃんがなかよく座っていた。わたしたちがオーダーを終えるやいなや、かわいいねえーとみんなが話しかけてくれた。そうすけも4人に向かって笑顔をふりまいている。
「いま何か月ですか」
「ついこの前4か月になったところです」
「そうなの。大きく見えるわねえ」
「そうすけっていいます」
「あらホントだ。そうすけくんっぽいお顔をしてるわねえ」
そうすけっぽい顔ってどんな顔なんだろう、とぼんやり思いながら会話をたのしんだ。そのあいだもそうすけは、自分が主役になっていることに気づいているのだろう、みんなに笑顔をふりまいている。そればかりか4人がほかの話題にうつると、こっちを向いてよとばかりに手足をぱたぱたしてアピールした。

 帰りに駅でエレベーターを待っていると、またもや、通りすがりのふたりのおばあちゃんが、かわいいねえーと声をかけてくれた。そうすけは空気を察したのか、またもや笑顔をふりまいた。家に帰ったのは午後6時過ぎで、そうすけ史上最長5時間のおさんぽになった。よくがんばったなあ。家に帰ってからも興奮冷めやらずで、ついには泣きだしてしまった。それは風呂に入るまでつづいて、入ったとたん、ぶりっと放出した。ああ、ほっとしたね。