6月16日、新オフィス。(妊娠11週4日)

 きょうから、新オフィスに通勤する。いつもより10分早めに家を出た。だんなもいっしょに家を出た。駅まで歩きながら、会話のつづきをする。
「いいねえ、新オフィス」
「きっと、ダンボールまみれだよ」
「あせってムリしないように」
「のんびりやるよ」
新橋で地下鉄にのりかえて虎ノ門に向かう。いままでは銀座だったので、ひと駅逆の方向だ。けっこう混んでいる。月曜日だからかな。毎日この状況だったら、時間帯をちょっとずらしたほうがいいかも。早めに行こうかな。ぼんやり考えながら歩いていたら、あっという間にオフィスビルが見えてきた。

 上司からきいたとおりに入館カードをつかって、フロアに到着。あたりまえのことでも、初日はドキドキ。仕事場も心なしか興奮気味だ。キャビネットの近くにダンボール箱が積まれている。キャビネットは6人が分けあってつかうのだが、わたしは運よくいちばん下の棚をつかわせてもらうことに。さっそく箱を開けて書類をかたづける。午前中には終わらせたい。おっと、あせってはいかんぞ。収納に手間どっていると、近くにいた先輩がマスクをくれた。
「空気よくないから、気をつけたほうがいいよ」
先輩は5歳ほど年上の大柄な男性だが、細やかな気くばりを忘れない。アレルギーをもっているので、ふだんから健康に気をつけているそうだ。
「ありがとうございます」
もらったマスクをつけて、再び、かたづけはじめた。かたづけながら、健康について気をつけていることを考えてみた。食事、外食が多い。睡眠、不足している。生活、不規則になりがちだ。ストレス、ためないように心がけているが実際はどうだろう。リスクを意識するか、意識しないか。それだけでずいぶんかわってくるはずだ。先輩のマスクが、その大切さを教えてくれた。