6月19日、12週0日。(妊娠12週0日)

 きょうから、妊娠4か月めに突入だ。実感は、まだない。12週めになると臓器や手足ができて、その機能を発達させる段階に入るそうだ。しゃっくりをして、呼吸の練習もするらしい。ここまで生きぬいてきた赤ちゃんは、染色体異常などの、赤ちゃん側の理由によって流産になる可能性が、かなり低くなるといわれている。そうすけ、いままでがんばってくれて、ありがとう。これからは、お母さんが気をつけるからね。バトンをうけとった気もちになる。

 妊娠12週に入ると、より心音がききとりやすくなる。と、ブログに書いてあるのを読んで、さっそく、例の通販でゲットした超音波ドップラーをとりだした。おなかを冷やしてしまわないように、10分だけ、ためしてみよう。電池をセットして、付属のヘッドフォンを側面にある穴に差しこんで、スイッチをまわしてオンにする。おなかにジェルをたっぷりぬって、本体ウラ面にある突起部をあてながらゆっくりすべらせる。前回やったことがあるから、なれている。すこしずつ探っていくと、恥骨のやや左上あたりで音を感じた。シュン、シュン、シュン、シュン。これは、わたしの心音だ。静かに呼吸しながら、左から右へと探っていく。恥骨の右上に近づく。自分の心音がよりくっきりときこえてきた。シュン、シュン、シュン、シュン。それにまじって、確実に速い鼓動がきこえてきた。トクトクトクトク。この音、そうすけの心音だ。5ミリほど右に動かすと、さらにクリアにきこえた。トクトクトクトク。わたしの心音と重なってきこえてくる。工事現場にいるみたい。パーカッションアンサンブルにもきこえる。そうすけの鼓動と、わたしの鼓動の、打楽器2重奏だ。

「ただいま」
超音波ドップラーをかたづけたところで、だんなが帰ってきた。
「きこえたよ、そうすけの心音」
「えっ、ホント」
「ききたいでしょ」
「いいよ、土曜の検診のときで」
またまた、やんわりことわられてしまった。でも、すごくうれしそうだ。