6月29日、走る妊婦。(妊娠13週3日)

「ああ、またやってしまった」
深夜から明け方まで、サッカーを観て、テニスを観て、サッカーを観て。完全な寝不足だ。運動不足だからか、からだを思いっきり動かしている人を見るとすっきりする。風をきって走っている人が、きらきらしている。わたしも16週になったらすぐ、マタニティヨガをはじめよう。あと2週間と4日。それまでは、ウォーキングとスポーツ観戦で、なんとかストレスを回避するのだ。

 風をきって走っている人、といえば。世界中の妊婦もびっくりのニュースが配信された。妊娠9か月の陸上選手が全米選手権に出場して、なんと800メートルを走ったそうだ。動画を見て、またびっくり。次週にも臨月をむかえる選手が、大きなおなかをゆっさゆっさ、ゆらしながら走っている。走りおえたあとも満面の笑顔で、観客に手をふっていた。あっぱれだ。よくとめられなかったなあ。おなかの赤ちゃんも、よくがんばったもんだ。彼女は、医師に相談したらおなかではなく背中をおされて、エントリーすることにしたという。

「とめられるかと思ったら、はげまされたのよ」
日本じゃありえない判断かも。転んだらたいへんだ、とか、血圧が上がりすぎたらたいへんだ、とか、心配ごとがいっぱいだ。この選手、過去にこの種目で5回も優勝しているらしい。もともと陸上選手だったからこそ、オーケーが出たにちがいない。おなかは大きいが、手足はスラッとのびて美しい。走る姿は豪快だ。自己ベストからずいぶん遅れた最下位になったけれど、おなかの赤ちゃんとの同伴レースに、スタジアムから一斉にあたたかい拍手が送られた。
「すべて順調だわ」
予選敗退が決まった彼女のひと言は、すがすがしかった。これで、心おきなく出産にのぞめる。走る姿のように豪快なママになることだろう。マイペースでマタニティライフをたのしんでいる、究極の実例を目のあたりにした。