6月30日、下着売り場へ。(妊娠13週4日)

 先週末から、夏のセールがはじまった。仕事帰り、百貨店やショップについ足が向いてしまう。お買いものは、計画的に。そう自分にいいきかせながらも胸がときめいてしまうのは、いたしかたないことだ。かしこく、お買いものしよう。これはぜったいにつかう、と決めたものだけをゲットすべしだ。
 マタニティ下着を、買おう。
そうそう、まだもっていなかった。いつもよくぶらぶらしている婦人服売り場をスルーして、下着売り場へ直行した。よしよし、ムダのない動き。下着売り場に到着、セールのショーツを見ながら様子をうかがった。店員さんがそばで陳列棚を整理している。いまがチャンスだ。声をかけてみた。
「マタニティのインナーを探しているんですが」
「あ、マタニティはフロアがちがうんです」
あ、そうだったんですか。教えてもらったとおり、フロアを移動する。ベビー用品売り場と併設されているんだ、マタニティコーナーって。いままで縁がなかっただけに、完全アウェイな気分になる。若い先輩ママさんがたのしそうにお買いものしている姿を見て、ますますそわそわした気分になる。そんななか、わたしよりもすこし年配で、田中美佐子似の店員さんが声をかけてくれた。

「きょうは、なにかお探しですか」
「はい、マタニティのインナーを」
店員さんのにっこり笑顔に、うっとり。こんなお母さんになりたい。
「お時間があれば、サイズはかりますよ」
「ぜひ、お願いします」
トップバスト、アンダーバスト、ウエスト、ヒップ。あと、へそまわりも測定した。つい、息をとめて、おなかを引っこめようとがんばってしまった。
「ブラジャーは2サイズ大きいものを選びましょう」
「未知の領域ですね」
「これからどんどん大きくなりますから」
「いまも、張っているんですけど」
「まだまだ、序の口ですよ」
「う、うれしい」
「わたしも、うれしかったです、卒乳までは」
そうか、授乳が終わったらサイズがもどるんだ。われにかえってブラジャーの説明をきく。カンタンに授乳できて、産前から産後までつかえるらしい。
「つぎは、ガードルですね」
「はい」
下腹部からななめ上に向かってベルト状のサポーターがついている。出産までのおなかの変化に対応して、重みを支える機能だそうだ。
「おなかが出ても、これならだいじょうぶですね」
「どのくらい出るんですか」
「完全に足もとが見えなくなりますよ」
「たいへんですねえ」
やがて、そんな日がくるんだ。まだ実感はないけれど心しておこう。田中美佐子似のおねえさんの笑顔がもっと見たくて、ブラジャーとガードルと腹帯をまとめて購入した。残念なことに、3点ともセール対象外の商品だった。