6月6日、ワクワクつづく。(生後164日)

 正午、そうすけとだんなと保育園へ向かった。そうすけをあずかってもらうためではない。バンドの練習だ。保育園の副園長さんのかけ声で、お父さんとお母さんによるバンドが結成された。だんなもわたしも、学生のころに経験があるので、声をかけられると、ついその気になってしまった。生演奏をきいたら、そうすけもよろこぶだろう。だんなはボーカル、わたしはパーカッションで参加するつもりでいたが、だんなが、ボーカルはいやだとこばんだ。人前でうたうのはひさしぶりなので、不安になってしまったのだろうか。強引にすすめたので、気をわるくしてしまったのだろうか。なにがやりたいの、ときいたら、タンバリンがいいという。じゃあ、ダブルタンバリンでいこう。うれしいことにウチにはタンバリンがふたつある。ふたりでやれば新鮮だ。そうすけを左手にだっこして、右手にタンバリンをもって、すわってスタンバイした。

 ボーカル、ギター、キーボード、パーカッション、ピアノ。副園長さんも入れて9人のメンバーがそろった。おしゃべりしながら和気あいあいとした空気のなか練習がはじまった。人気のアニメソング、お父さんとお母さんがすきなアーティストの歌を5曲くらい選んで、その場でタブレットで聴いてたしかめながら練習した。これなら初見でも、すーっと演奏に入っていける。便利な世の中になったもんだ。そうすけは、ボーカルのお父さんがうたう様子をじっと見ている。お父さんといっても、あきらかにわたしよりうんと年下だ。おにいさんとよぶことにしよう。おにいさんは歌がうまい。だんながこばんだのは、正解だったかもしれない。そうすけも聴きほれている。と思ったら、いきなりシャウトしているではないか、そうすけが。全身のちからをふりしぼるようにして叫んでいる。あー、ああー、うー。おにいさんといっしょに熱唱している。

「そう、そう。自由にうたっていいんだよ」
おにいさんに声をかけられて、いったん口をつぐんでいたが、演奏がはじまるとまたうたいはじめた。あー、あああー、ううー。気もちよさそうだ。自分を表現するよろこびを味わっているのかもしれない。タンバリンをにぎらせると、手のひらでぴたぴた、さわりはじめた。家に帰ってからも、そうすけの興奮はつづいた。バンドで練習した曲をなんどもいっしょに聴いて、なんどもうたった。1年前のきょう、そうすけの存在にはじめて気づいておどろいた。そしていまも、おどろきの連続だ。これからもつづくだろう。つづいてほしいと願っている。