7月28日、万全の態勢。(妊娠17週4日)

 午後5時5分前、恵比寿のクリニックがあるビルの入り口で、だんなと待ちあわせた。羊水検査の結果が出ました、とのこと。いっしょに結果をきくよ、と仕事場から来てくれた、だんなに感謝。とても緊張していた。大学受験のときや、就職活動のときとは、まったくちがう種類の緊張感だ。自分で結果を導きだすことはできない。心の準備をしていても、気もちがふわふわ不安定だ。
 クリニックに向かう途中で突然、雨が降りだした。空は晴れている。こういうのを、きつねの嫁入り、っていうんだっけ。嫁入りっていうくらいだから、いいことがあるにちがいない。クリニックに着くと受付をすませて、番号札をもらって、待合室へ。番号札は、39だった。だいじょうぶ、サンキューだ。ついつい縁起をかつぎたくなる。いまなら、幸運のツボも買ってしまいそう。

「39番の方、お入りください」
「はい」
先日お世話になった院長先生が、むかえてくれた。
「結論からいいますと、染色体異常はありません」
ほっとした。結論から話してくれて、先生ありがとう。資料をいっしょに見ながら、説明してもらった。サインが入った英文の検査結果、その和訳、染色体の写真。だんなと、わたしから、23本ずつ。23組、46本の染色体を受けついでいる。23組のうちの1組は、性別を決める性染色体だ。見ると、X染色体とY染色体が1本ずつだった。そうすけは、やっぱり、そうすけだった。

和訳には、このように書かれてあった。
羊水染色体分析 結果の解釈(和訳)
RESULTS: 正常核型
結果の解釈:
解析の結果、臨床的に意義のある染色体の数値異常、または、構造異常(転座など)は認められませんでした。
この解析で用いられる標準的な細胞遺伝学的方法では、微細な構造異常および低頻度のモザイクは通常は検出されませんし、染色体の微細欠失の検出はできません。また、マイクロアレイ法で検出される可能性のある分子細胞遺伝学的な異常(微細欠失や微細重複)も検出できません。

 染色体異常は、赤ちゃんの病気のほんの一部にすぎない。全体の0.92%だそうだ。約3%から5%は、なんらかの治療が必要だといわれている。羊水検査ですべての病気を診断することはできない。生まれてくる赤ちゃんのだれもに、病気をもつ可能性はあるのだ。だんなはさっそく、この先にうけるべき検査についての質問をしていた。つぎは、妊娠25週前後でうける、胎児超音波スクリーニング検査。万全の態勢で、そうすけをむかえようと思う。

 晩ごはんをたべていると、母からメールがとどいた。
「よかったね。きっとだいじょうぶだと思っていたけれど。ほんとうに、よかったね。聡さんのお父さんも、お母さんも、大よろこびだと思うよ。ムリをしてころんだり、すべったり、しないようにね。栄養をとって、お日さまにもあたって(帽子はちゃんとかぶること)、元気にすごしてね。高いところに手をのばしたり、跳んだりはねたりしなければ、いつもどおりでいいんだよ。どんどんおなかも大きくなるし、たいへんなときもあるとは思うけれど。待ちに待った赤ちゃんが、生まれるんだから。たのしみながら、気をつけて」