7月8日、好みがかわった。(妊娠14週5日)

 あきらかに、好みがかわった。それも、男性の好みが。ワールドカップの特集をなんども見ているうちに、気づいてしまった。いままでなら、ただ見ているだけだった選手を、うっとりしながら目で追いかけている。夢にまで出てくるようになった。その男性とは、オランダのアリエン・ロッベン選手だ。とうとう日記に書いてしまった。今夜も夢に出そうな気がする。オランダに行ったこともないのに、ロッベン選手に会ったこともないのに。夢のなかでは家族のように、とても親しげだ。目黒川のほとりをふたりでジョギングしている。

 もともとは、少年のようなあまいマスクが好みだ。コロンビアのハメス・ロドリゲス選手とか、ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウド選手とか。日本人なら、内田篤人選手とか。ひたむきにがんばっている姿を見ると、無条件で応援したくなる。努力している顔は、美しい。そう思って見ていたが、弾丸のごとく走るいきおいに、すべてがふきとばされてしまった。走る、走る、ガシガシ走る。なんてかっこいいんだろう。オランダが準決勝にのこってよかったなあ。これで、また見られる。だんなは、アルゼンチンひいきだけど。

 女心と秋の空。などと、よくいわれるが、女性はホルモン分泌の変化にともなって、こころとからだに変化があらわれるそうだ。たとえば、日ごろ中性的な顔立ちの男性が好みだった女性も、妊娠しやすい時期には、男らしい顔の男性にひかれるようになる。がっしりした骨格、男らしい低い声、シンメトリーな顔やからだ。またそのころは、においに敏感になるため、いいにおいがする男性にひきつけられる。優良遺伝子をそなえた男性はいいにおいの体臭がするからだ。男性の好みがころっとかわるのは、ホルモンバランスによるものだといってもいいだろう。女性は、よりよい遺伝子をもつ男性を本能的に選ぶようにできているのだ。けっして浮気性ではない。と、考えると、前向きな気分になる。いまはロッベンさんをすきでいよう。いっぽう、だんなはといえば、髪形も、身長も、ロッベン選手ではなくアルゼンチンのメッシ選手似だ。