7月9日、歴史的残便。(妊娠14週6日)

 7対1。ドイツ対ブラジル戦は、まさかの展開だった。ワールドカップ開催国のブラジルを、ドイツが歴史的大差でやぶった。ブラジルサポーターの泣きさけぶ顔を、朝から山ほど見てしまった。どんよりした気分だ。台風8号の接近で、雨もふっている。転ばないように慎重に足をはこびながら、仕事場へ向かった。きょうは午後1時から、お得意先との大事な打合せがある。気もちを切りかえていかないと。それにしても、あんな試合になるなんて。心外だ。

 打合せの前にゆっくりトイレに入ろうと思いながら、バタバタしているうちに行きそびれてしまった。これがあとでたいへんな事態をまねくことになろうとは、まったく思いもよらなかった。打合せは今朝の試合とは対照的に、すがすがしい展開だった。会話と笑いのたえない、気もちのいい打合せだった。よかった、よかった。仕事場にもどったら、まとめを書いてチームで共有しよう。21時ごろに帰宅した。トイレのことをすっかり忘れていた。

 家に着いたらすぐに、トイレにとびこんだ。どこかで入ろうと思っていたのに、もう、こんな時間か。おなかが、ぽっこりしている。だんなもまだ帰ってきていないし、すきなだけ入れるからいいや。と、最初のうちは楽観的だったけれど。くるしい。かたまりがつっかえている。そこにあることは、わかっているのだが。まったく動かないぞ。シャワートイレのシャワーを、中から強にしてみる。時間をかければ、なんとかなるか。いや、今回のは手ごわいぞ。1時間どころじゃ、どうにもならなそうだ。自宅だし、じっくり待つか。
 2時間が経過した。変化は、ない。からだじゅうに汗が出る。タオルでふきながら、ひたすらチャンスを待つ。動かない。だんなが、帰ってきた。
「すごい汗」
「だめだ、出ない」
「お風呂わかそうか」
「うん」
だんなが風呂をわかしているあいだ、トイレから出て、ぺたぺた歩きまわってみたり、ヨガをしたり、またトイレに入ったり、を、くりかえした。からだを風呂であたためて、またトイレに入る。出ない。また風呂に入る。からだがあたたまったら、トイレにもどって様子をみる。すこし、ほぐれてきたような気がする。ふらふらになって、ようやく解放された。根本的に食生活を見なおしたほうがよさそうだ。予定日の2015年1月1日まで、まだまだ先は長いぞ。