午後、大学時代からの友だち3人で、ミュージカルを観に行った。帝国劇場のミス・サイゴン。なつかしい。本田美奈子さんがヒロインのキム役を演じていたころにも行ったことがあるけれど、あれは何年前だっただろう。ネットで調べてみると、1992年から1993年に上演と書いてある。20年以上も経っていたとは。あの日の胸の高まりを、きのうのようにおぼえている。
ミス・サイゴンは、こんなストーリーだ。
戦争末期のベトナム。両親をうしなった17歳のキムは、陥落直前のサイゴンにある、フランス系ベトナム人の男エンジニアが経営するキャバレーではたらいていた。そこでアメリカ兵のクリスと出会い、恋に落ちる。永遠の愛を誓ったふたりは、サイゴン陥落の混乱のなか、無情にも、米兵救出のヘリコプターにひき裂かれてしまう。クリスはアメリカに帰国してエレンと結婚するが、キムを想い、悪夢にうなされていた。いっぽう、エンジニアと国境を越えてバンコクにのがれたキムは、クリスとのあいだにできた息子タムを育てながら、いつかクリスがむかえに来てくれることを信じていた。戦友のジョンから息子タムの存在をきいたクリスは、エレンを連れてバンコクへ向かった。待ちに待ったクリスがむかえに来てくれた、と、胸をはずませて、クリスが泊まるホテルへ急ぐキム。そこでエレンと会い、現実を目の当たりにする。傷心のキム。彼女は愛する息子タムのしあわせをねがい、最後の決心をするのだった。
どうして、ミセス・サイゴンではなくて、ミス・サイゴンなんだろう。そのタイトルが、ストーリーのラストを暗示していた。ミスのまま、生涯いちどもミセスになることができなかった、キム。彼女はクリスと結婚式をあげたつもりでいたけれど、現地の言葉が理解できなかった彼には、そのことがわからなかったのだ。その結婚式で、キムはミス・サイゴンとよばれ、キャバレーの仲間たちに祝福されていた。みんながうらやむ、ミス・サイゴン。夢を手に入れた、ミス・サイゴン。なのにキムは、ほんとうの夢をかなえることができなかった。あまりにも、かなしすぎる。愛に生きた女性、キム。タムへの想いをうたった「いのちをあげよう」が胸にささる。なんどきいても、泣けてくるなあ。いま、そうすけといっしょにきいているなんて。なおさら、泣けてくるなあ。