Diary

にんしん日記

44歳で妊娠、45歳で出産した神戸 海知代の妊娠・出産・子育てせきらら体験記。
妊娠を知った2014年6月6日からまる1年、1日も休まずつづった記録です。

11月18日、眠れる森のニンプ。(妊娠33週5日)

 気づいたら、朝だった。パソコンが起動するまで待っているわずか数分のあいだに眠りに落ちてしまったようだ。このごろ突然、眠くて、眠くて、しかたなくなることがたびたびある。いつもどおりに、ムリしないですごしているつもりなんだけど。どうしたんだろう。だんなにきくと、ゆすっても起きないくらいぐっすり眠っているそうだ。きっとからだがエネルギーをもりもりたくわえているんだよ、と歓迎しながら教えてくれる。それは歓迎すべきだけど、自分で自分のコンディションをコントロールできていないことに不安を感じる。

 どうして眠くなるんだろう。メカニズムを調べてみると、いくつか理由が見つかった。たしかな自覚はないけれど、心づもりしておくとよさそうだ。
・眠くなる理由①
赤ちゃんを順調に成長させるため体力が消耗しないようにして眠くなる。
・眠くなる理由②
赤ちゃんに血液をどんどん送りこもうとして心臓が大きくなってくる。そのため体温が高く呼吸があがりやすくなり、からだも疲れやすくなる。
・眠くなる理由③
赤ちゃんに栄養をいきわたらせるために、鉄分などがどんどんつかわれ不足しがちになるため、貧血状態になっていることが多い。
・眠くなる理由④
妊娠初期には黄体ホルモンが多く分泌されるため、疲れやすくなる。やがて黄体ホルモンは分泌されにくくなるので、こんどは夜熟睡しにくくなり、昼間に突然眠くなったりすることがある。
 なるほど。からだはよくできている。なんにもしなくても自らベストの状態にバランスをととのえる機能があるわけだ。自分のからだを信じてみよう。

 朝、だんなが仕事に出かける前、義理の弟からケータイにとどいたメールを見せてくれた。3人めの赤ちゃんを授かったことがわかったそうだ。予定日は、4月22日。おなじ学年にはなれないけれどうれしいね、そうすけ。いっしょにあそんでいるところを見てみたい。またひとつ、たのしみが生まれてきた。

11月17日、ぬくぬくタイツ。(妊娠33週4日)

 おっと、あぶない。またころびそうになってしまった。このごろおなかが大きくなってきたので、タイツやレギンスをはくときには要注意だ。とくに左足を差しこもうとするときに、バランスをくずしそうになる。なるべくすわってはくように心がけてはいるが、急いでいると、ついつい立ったままではこうとしてしまう。けっきょく、すわってはくよりも、もたもた時間がかかってしまう。急がばすわれ、なのだ。風呂でからだを洗っているときにもいえる。なかでも足の裏を洗っているとき。このごろ、ひざから下を洗うだけでバランスをくずしそうになる。家では大きめのバスチェアーをつかっているのでちょうど腰をおろすだけですわれる。おかげでバスタイムをリラックスしてすごしている。

 このところさむくなってきたので、タイツを愛用している。ワンピースを着てマタニティタイツをはけば、それだけでもコーディネイトできているように見えるから、ありがたい。黒・茶・紺・グレー・チャコールグレーなどの深めのダークカラーのタイツは足をきれいに見せてくれる視覚効果もあるから、なおさらありがたい。いまは見ためよりもあたたかさを優先している。110デニールのタイツを選んでいる。タイツ通にいわせると、はいたときにいちばん太って見える厚さなんだそうだ。もっとも足が細く見えるのは、30~40デニール。透け感もあってセクシーだ。でもやっぱりさむそう。デニール数が多いタイツほど、からだがしっかりあたたまる。こんなデータがあった。

素足=保温率0%
30デニール=保温率12%
60デニール=保温率13%
80デニール=保温率15%
110デニール=保温率16%
160デニール=保温率18%
210デニール=保温率20%

 保温率とは、素足の保温性を0%としたときに、それぞれのデニールのタイツにどのくらいの保温性があるのかを数値化したもの。約50℃の湯が入った容器をタイツでおおって、約2時間後の湯の温度差を計り、もとの湯の温度との差を基準の温度差で割って、算出しているんだそうだ。データを見ると、冬のさむい日には80デニール以上の厚手のタイツを選んではくのがよさそうだ。

11月16日、からだにいいこと。(妊娠33週3日)

「そうすK、いい試合だったなあ」
「そうすK、あと一歩だったなあ」
男子テニスのATPツアーファイナル準決勝で、錦織圭選手がノバク・ジョコビッチ選手と対戦。1‐6、6‐3、0‐6のフルセットで敗れ、はじめての決勝進出はならなかった。うーん、残念。一時ジョコビッチ選手を追いつめていただけに、おしい気もちだ。でも、たのもしいなあ。世界ランキング1位のジョコビッチ選手もイライラしてしまうほどの、すばらしい試合だった。錦織圭選手はいま、世界ランキング5位。これからどこまでのびるだろう。

 テニスを応援していたら、からだを動かしたくなった。朝、さっそく準備をして、だんなとマタニティヨガへ。10時半からはじまるので、9時半に出れば十分間にあう。が、きょうはふたりともやる気まんまん、9時過ぎには家を出た。駅まで歩きながら、ヨガのあとにどこでランチをしようか、と話している。だんなもわたしも、たべることがだいすきだ。やっぱり、ヨガのあとだからからだにいいものがいいなあ。そんなことをいいながら、いつもすきなものをたべている。おいしいものをたべるためにからだを動かしている、といっても過言ではない。ダイエットにはならないが、いまはよしとしよう。

「妊娠、おめでとう」
先輩ママのインストラクターさんに声をかけられた。きょうは教えにきているのではなく、生徒として参加しているそうだ。実際に彼女もお産の2日前までヨガをつづけていた。心づよいなあ。その2日前のレッスンで体験したそうだが、トライアングルポーズをとっていると、おなかのなかの赤ちゃんがあたまを下にしながら、すぽっとおさまるカンジがしたという。あぁ、きた、きた。と思ったら、その翌日に陣痛がきて産んじゃったのー、と笑っている。
「すごい、そんなに気もちよく産めるなんて」
「からだを動かしているといいことあるわよ」
その教えを信じて、ぎりぎりまでヨガにかよいつづけてみるつもりだ。

11月15日、きものランチ。(妊娠33週2日)

「どうも、こんにちは」
「わあ、おなか、大きくなったねえ」
外苑前駅で、待ちあわせ。きもの着こなし講座のメンバーで、きものランチに行く。わたしは、ワンピースにウールのカーディガン。前回みんなと会ったのが7月12日だから、ちょうど4か月が過ぎている。自覚している以上に、おなかの変化が大きかったみたいだ。びっくり顔が、こんなにたくさん見られるとは。もうひとつ、予想外の感想がみんなから出てきたのでおどろいた。
「思ったほど太ってないよね」
「ちゃんとたべてる?」
いやいや、ぜんぜん、たべているんですけど。1か月1キロを超えているし、気をつけなければいけないところまできているんですけど。きっと妊婦の見ためのイメージというものがあって、それとちがっていたのだろう。マタニティウエアを着ていないから、なおさらちがって見えるのかもしれない。太りすぎを気にしているのを思いやって、こんなふうにいってくれたのかもしれないが。

 食事をしているときも、出産や子育ての話で盛りあがった。きものの先生は2人の息子さんと1人の娘さんのお母さんで、大大大先輩ママだ。出産までにかかった時間は、3人めがいちばん早かったそうだ。あまりに早すぎて、陣痛がはじまると分娩室へダッシュして分娩台に飛びのったんだとか。そうでもしないと間にあわなかったのよ、とニッコリほほえんでいる。無敵の微笑だ。いざというときのためにも、ダッシュできるくらいの体力はたくわえておきたい。そういえばきのうの撮影でお世話になった演出家の奥さんも、火曜に赤ちゃんが生まれたばかりだ。初産で、予定日より3日早く生まれたそうだ。陣痛がきてから出産までに26時間かかったという。こちらも体力勝負だ。

 ランチのあと、みんなでおさんぽしながら、先生の教え子さんが開いているきものショップへ行った。ちょうどいい腹ごなしになって、そのうえ目の保養もできるとは。なんてごきげんな土曜の午後だろう。15分ほど歩いてお店に到着。店主をしている教え子さんが大島紬をすっきり着こなしている。きものってすばらしい、と、あらためて思う。みんなのテンションがぐっとあがる。
「ああ、きれい」
「かんべさん、産んだときのごほうびにね」
「だんなさんに、おねだりするのよ」
「いまから仕かけておかなきゃ」
きものを手に入れるための作戦を、みんなが耳打ちしてくれた。きものや帯をつぎつぎに合わせてコーディネイトも完了。あとはおねだりするのみだ。

11月14日、お母さんのちから。(妊娠33週1日)

 朝8時半に、渋谷で待ちあわせる。きょうは、撮影の立会い。午前中に光が丘へ行き、午後に千葉ニュータウンへ行く予定だ。生後2か月の赤ちゃんとその家族に会う。ワクワクするなあ。それにしても、眠い、眠い、眠い。3時ごろに目が覚めて、そうすけが元気よく動いていたのでつきあっているうちに朝になってしまった。朝の人気番組のキャスターも、毎日こうやって早起きしているんだっけ。そう思えば気がラクになる。きょうもたのしくがんばりましょう。

 光が丘に到着するとすぐに、おじいちゃん、おばあちゃん、赤ちゃんとお母さんがあらわれた。おはようございます、よろしくお願いします、と、にこやかにあいさつをするとさっそく撮影がはじまった。思ったよりも、2か月の赤ちゃんって大きいんだなあ。産後クラスで出会った生まれたての赤ちゃんを思いだしながらくらべてみると、成長がよくわかる。貫録さえ感じる。このままいけば、よゆうで撮影できそうだなあ。そう思うやいなや、赤ちゃんが泣きはじめた。ああああ、とまらない。突然の変化に、赤ちゃんをだっこしていたおじいちゃんも、あわてる、あわてる。おばあちゃんは、笑いがとまらない。ここはお母さんのちからをかりよう。お母さんがやってきて、赤ちゃんをだっこする。と、たちまちぴたりと泣き声がとまった。魔法を見ているようだ。

 千葉ニュータウンに移動して、地元のレストランでランチをとった。イタリアンのバイキングだ。うれしいけれど、きけん、きけん、バイキングって。ついつい、好奇心を刺激されてたべすぎてしまう。ふつうの皿と6つ仕切りのある皿があったので、6つ仕切り皿を選んでとりすぎ&たべすぎをセーブ。それでもデザートまでしっかり完食した。同行したアートディレクターの先輩は、夜にも別件の打上げがあるらしい。たべたあと、しきりにたべすぎを後悔していた。

 2件めの家族も、うらやましいほどしあわせそうだ。やっぱり2か月になると大きくなるんだなあ、赤ちゃんって。先日の産後クラスで生まれたばかりの赤ちゃんを見るまでは抱くことのなかった感想だ。起きているうちにさっさと撮ってしまいましょう。さくさくと準備をして撮影がはじまる。15分ほど経ったころだろうか、赤ちゃんが、すやすや、すやすや。あらあら、眠りはじめてしまった。赤ちゃんの撮影は最初の15分が勝負なんだよ、とアートディレクターの先輩がこっそり教えてくれた。お母さんが、ミルクをのませて起こします、というので授乳タイムをとることになった。お母さんもたいへん。努力の甲斐あって赤ちゃんはごきげん。授乳タイムのあとはいちども泣くことなく、気もちよく撮影がすすんだ。お母さんのおっぱいのちからには、だれもかなわない。

11月13日、頻尿と尿もれ。(妊娠33週0日)

 トイレに行く回数がふえてきた。もともとすくないほうだったので、ちがいがよくわかる。この時期に頻尿になりやすいのは膀胱が圧迫されるのが原因で、分娩にそなえて赤ちゃんが骨盤に下りはじめるからだそうだ。頻尿だからといっても、水分をひかえるのはよくないらしい。尿路感染症や脱水症にかかることがあるからだ。いつも水分を適度にとるように、心がけようと思う。

 もうひとつ気になるのが、尿もれ。大きくなった子宮に膀胱が圧迫されて尿が近くなり、尿もれがおこりやすくなる。対処法としては、トイレをがまんしないでこまめに行くこと、吸水機能付パンティーライナーなどをつかって対応すること。ひそかにくらべながらお気に入りを見つけたので、それをつかっている。おりものと水分ケアができる、吸収量20ccのロングタイプだ。

 ネットで調べてみると、日常生活のなかではとくにこんなところに気をつけるといい、とアドバイスが書かれている。
・尿意を刺激しそうなものを、さけること。カフェイン、アルコール、柑橘系のくだもの、刺激のつよいたべもの、炭酸飲料など
・骨盤をひきしめる体操をする
・くしゃみなど、尿がもれそうなときには足を組む
・便秘にならないように気をつける
・排便中にいきまない
・太るほど膀胱が圧迫されるので、しっかり体重管理する
過半数の女性が、妊娠中に尿もれを体験しているという。恥ずかしがらなくてもいいんだ。せきやくしゃみが出るときに悩まされている人が多く、かぜや花粉の季節がとくにつらいようだ。たしかに、せきやくしゃみが出たときピンチをむかえることが多い。足を組んでしのぐことにしよう。と、こんなところで書いてしまったら、これから妊娠中の女性が足を組むたびによけいなことを想像してしまうではないか。ま、自分が気にしていても、他人はそこまで気づかないと思うけど。段差でうっかりつまずいたときもピンチだ。気をつけよう。

11月12日、兄の引っ越し。(妊娠32週6日)

 兄が、12月中旬に引っ越すつもりだという。また、新しい活動の拠点を見つけたようだ。家を買いかえるのはこんどで3度めになる。そのバイテリティに、いつもおどろかされる。思いたったらすぐ行動にうつす。ためらわない。それが兄のいいところでもあり、ドギマギするところでもある。さっそく電話した。
「よお、元気でやってる?」
「ぼちぼち。兄ちゃん、引っ越すんだって?」
「そう、そう。いいとこ見つけたんだ。天文台がついてるの。以前、大学教授が住んでいたんだって。駐車場も充実しているし、いうことなしなんだ」
そう、そう。兄は車がだいすきで、駐車場が大きくないとだめなんだ。それにしても、天文台がついている家なんてあるんだ。見たことないなあ。
「ふーん、天体望遠鏡もついてるの?」
「あるある。教授がいらなかったら処分するよっていうから、だったらそのままにしてっていったんだ。けっこう専門的なやつらしいよ」
「へええ、そりゃよかったねえ」
「生まれたらこっちに連れてきなよ。みんなで天体観測しようよ」
おうちの天文台でみんなで天体観測、かあ。たのしそう。あたまのなかに、どんどんイメージがふくらんでいく。イメージどおりだったら、ステキだなあ。
「12月中旬に引っ越すんだっけ」
「そう。おふくろが、12月上旬にこっちにくるっていっているけど」
「兄ちゃんとこ、泊まれるの」
「いつでも、オーケー」
とはいっても、引っ越しの準備のまっただなかだ。ダンボール箱まみれで寝ることになったらきついなあ。小柄な母だから、寝られそうではあるが。
「だったら、わたしんちに泊まればいいよ」
「え、だいじょうぶ?」
「聡さんの書斎をかたづければ、だいじょうぶだよ」
「わかった、おふくろと話してみる」
今週末にちょうど兄が大阪に出張するので、実家に寄って母とどうするか相談して決めることになった。よかった、よかった。まずは書斎にたまった本をかたづけなければ。本の買取サービスを調べてネット予約を入れた。

11月11日、ベビーバス。(妊娠32週5日)

 母から、ベビーバスがとどいた。空気入れもいっしょだ。これで、ベッドもお風呂もそろった。そうすけ、たのしみだね。母のメールがうれしい。
「ベビーバスと空気入れをゲットしました。あんまりちからを入れなくてもつかえる空気入れが、なかなか見つからなかったよ。やっと、これならつかいやすそう、と思えるのがあったので、それに決めました。まずはたしかめてみてね。自分だけのからだじゃないから、ムリしないように気をつけて」
さっそく返信した。
「母さん、メールありがとうね。確認するね。妊娠検診に行ったら、ちょっと小さめだけど標準だっていわれたよ。羊水の量もだいじょうぶ、とのこと。ひきつづき、ぼちぼち、がんばりまーす。とどいたら連絡するね」
母から返信がきた。
「いまのところ心配ないみたいで、よかったね。むかしから、小さく産んで大きく育てる、という言葉があるくらいだから、だいじょうぶだよ。ちゃんとごはんをたべて、栄養をしっかりとってね。ムリをしすぎないようにね」
ムリしないでね、と、なんどもいわれると気になるなあ。ムリしているように思われているのだろうか。産休までもうすこしおとなしくしていよう。

 ベビーバスに空気を入れて、たしかめてみる。クッキーの箱くらいの大きさのパッケージだったので、小さいかな、と思っていたけれど。ふくらませてみると思ったよりかなり大きい。なかなかふくらまないぞ、と思ったら、空気を入れる場所が4か所もあってびっくり。あんまりちからを入れなくてもつかえる空気入れがあって、これはよかった。ふくらませたベビーバスを、あらためてながめてみる。内側にお湯を入れるラインが書いてある。ここまでお湯を入れて、そうすけがたっぷんとつかるわけね。しばらく目をつぶって、シミュレーションをしてみる。バスタイムが気もちよくすごせますように。このベビーバスならシンクにもぎりぎり入るサイズだ。ベビーバスに入れるのもはじめの3か月くらいだし、シンク用とバス用をつかいわけなくてもよさそうだ。なるべくものをふやさないようにしよう。そう、3人のダイビング貯金のためにキープするのだ。

11月10日、産後クラスその2。(妊娠32週4日)

 産後クラス後半のグループワークでは、母乳育児について話しあった。母乳育児のいいところ、わるいところ、家族にできること、をグループで話しあったあと、助産師さんがホワイトボードに書きだしてまとめていく。おっぱいについてこんなにみっちり考えたのは、生まれてはじめてのことだろう。

【母乳育児のいいところ】
・スキンシップがとれる。
・栄養がしっかりとれて、免疫もつけられる。
・お母さんの体重がもどりやすい。
・赤ちゃんの消化が早い。
・ほしいときに、すぐあげられる。
・荷物がすくないので、おでかけしやすい。
・コスト0円。お金がかからない。
・災害時にもあげられる。
・がんのリスクを減らす。
・骨粗しょう症を予防できる。
実際に、3.11のときにも、助産師さんが被災地に行って、お母さんたちのおっぱいをケアしてちゃんと出るようにお手つだいをしていたそうだ。

【母乳育児のわるいところ】
・授乳が頻回で、お母さんの負担が大きい。
・他の人に、お願いできない。
・外出時、出先での授乳場所探しがたいへん。
・出ないと、母児にストレスがたまる。
・お母さんのたべものが制限されがち。
・乳首が痛くなる。
・赤ちゃんが夜型でしんどい。
母乳が出ない人は全体の約1%だけといわれている。ということは、わたしもおそらく出るにちがいない。ケアをおこたらないように気をつけよう。

【母乳育児で家族ができること】
・栄養いっぱいの料理で応援する。
・お母さんのイライラをやさしくうけとめる。
・授乳スペースを探しておく。
・家事を手つだう。
・搾乳したおっぱいをかわりにあげる。
・おむつ交換などでサポートする。
・マッサージで応援する。
このあと、おむつ交換の実習がある。だんなが、はりきっている。参加をしたご主人さんもみんな、やる気まんまんだ。こうやってモチベーションをあげるんだな。よく考えられたプログラムだなあ、このマタニティクラス。

 おむつ交換はまず、だんなとわたしから。先輩ママAさんも、小児科勤務のプレママさんもそのご主人さんも、すでに体験しているからだ。実物大の人形を相手におそるおそる、おむつをあてる。日赤医療センターでは、2年前から布おむつではなく紙おむつを推奨している。立体ギャザーを立てて、フリルを外側に出しておく。たったそれだけをするのに、いちいちびくびくしてしまう。ウエストまわりにゆるみはないかな。指1本入るくらいがいい。指1本入ったー、とよろこびながら、これが人形でよかった、と安心する。まだまだ未熟者だ。

11月9日、産後クラスその1。(妊娠32週3日)

 日赤医療センターの、産後クラスに参加した。妊娠30週以降の妊婦さんとパートナーを対象にしている。どの参加者もおなかがめだってきていた。出産をより身近に感じる。M夫妻もやってきた。元気そうだ。あれ、おととい会った先輩ママさんのAさんがいない。どうしたのかな。ホワイトボードにきょうのスケジュールが書かれている。オリエンテーションのあと、産後の母体や生活の変化について先輩ママさんの体験談をきく。赤ちゃんのゲストをまねいて、助産師さんから赤ちゃんの出産後についてのお話をきく。DVDによる産科病棟の紹介、休憩をはさんで、母乳育児についてのグループワーク、おむつ交換の育児体験、そして院内見学。きょうも盛りだくさんだ。たっぷりたのしもう。と、Aさんが急いでやってきた。おなじテーブルにすわった。よかった、よかった。

 おなじテーブルになったのは、先輩ママAさんと、30代半ばくらいの初産のご夫婦だった。なんと奥さんは小児科、だんなさんは感染症科のプロフェッショナルで、知識も専門的だ。なんとすばらしい偶然。グループワークでいろいろ教えてもらおう。でも、ふたりがいうには、どれだけ現場にいても出産体験ははじめてなのでわからないことばかりなんだそうだ。やっぱり、経験にまさるものはないんだなあ。先輩ママAさんとさっそく盛りあがっている。

 ママと赤ちゃんのゲストが、講義室にやってきた。赤ちゃんは、ふたり。ひとりは、きょう1時34分に生まれたばかりの男の子。2900グラムくらいだったという。もうひとりは、11月5日生まれの女の子。からだの大きさは男の子とおなじくらい。肌の色がちがう。男の子はまだ、肌の色が赤っぽいけれど、女の子は数日が経って黄色くなってきている。生まれて7日後くらいに向けて黄だんが出てきて、それから、白くもどっていく。それにしても、小さい。小さいなあ、赤ちゃんって。さわるのがこわいくらいだ。こんな小さい赤ちゃんでも、おなかのなかにいるんだと思うと、こんどは大きく感じる。ふしぎなことだ。どんなふうに過ごしていたんだろう。ぼんやり考えていたら、女の子を産んだママさんがあらわれた。さっそくみんなで、ママさんの話をきく。

 ママさんは、予定日よりも5日早くきざしがあったそうだ。陣痛よりも先に破水した。移動中の車のなかでどんどんあふれてきて、これはまちがいない、と感じたという。9時に入院して、陣痛がきたのは22時、赤ちゃんが生まれたのは翌日16時。陣痛から18時間。たいへんだったろうなあ。だんなさんとお母さんに立ち会ってもらってよかった、と感謝している。産むときに、だんなさんが呼吸にあわせてマッサージしてくれたそうだ。最初はなれなくて、へたくそー、とケンカしそうになったりもしていたけれど、助産師さんに教わってどんどんうまくなったんだとか。お母さんは精神的な支えになってくれた。わたしもできたんだからできる、できる、といわれて、心づよくなれたという。生まれたときの気もちはうまくいいあらわせないくらい、しあわせ。生まれるまでは、出産ってなんなんだろうと混とんとしていたのが、なにもかもよかった、の気もちにかわったという。なにもかもよかった、を感じてみたい。みんなうっとりしている。

 産後2日め、3日めくらいから胸が張る。ママさんは、産後2日めから胸が張ってのんでもらわないと痛いほどだったそうだ。赤ちゃんは、1日め、2日めからいきなり、おっぱいをすごくほしがる。これは、おなかがすいている、というよりも、吸うことで安心したい、という生理的欲求からくるそうだ。この日を境にして、ママさんは1~2時間に1回くらいの頻度でおっぱいをあげるようになる。授乳回数の目安は1日に14回。ハードな作業だ。でも、なによりも大切だ。このあとのグループワークで、それを学んでいく。おっぱいについてみんなで話すなんて、いままでなかったなあ。つづきは、あした。