10月21日、こども広告教室。(妊娠29週5日)

 午前9時前。小雨がぱらつくなか、千代田区にある小学校の校門前で待ちあわせた。これから、広告の授業がはじまる。ポスターをつくるたのしさやおもしろさを、6年生のみんなといっしょに体験する。これはコピーライターズクラブが企画したボランティア活動で、毎年おこなわれている。わたしが参加するのは、今回が2度めだ。校門の前に立っていると、つぎつぎにメンバーがあらわれた。講師のみんなも、顔がほころんでいる。これからおこる出来事に、胸をわくわくさせているのだ。さあ、今年はどんな子どもたちが待っているのかな。

「みなさん、おはようございます」
「おはようございます」
広告の授業は、元気なあいさつからはじまった。大きな教室に2クラスぶんの生徒があつまって話をきく。広告ってなんだろう。広告ってどんなふうにつくられるんだろう。の、お話からだ。三角座りをしながら、みんなが顔を上げてきいている。好奇心で目がきらきらしている。このコマーシャル知っているよ、とか、この広告だいすき、とか、ぽんぽん感想がとびだしてくる。広告を手がけているわたしたちにとって、これほどうれしいことはない。お話が終わると、クラスにもどってチームにわかれて、いよいよポスターづくりだ。

 わたしの担当したチームは、女の子が2人と男の子が3人、ぜんぶで5人のチームだ。おませな女の子とやんちゃな男の子。このくらいの年齢だと、女の子のほうがぐんと大人っぽい。見ためも女の子のほうが身長が高くて、からだも大柄に見える。2人の女の子は、3人の男の子を小気味いいくらいに尻に敷きながら打合せをすすめていく。男の子のやんちゃ坊主に、どんどん拍車がかかる。おたがいにそうやって、ここちいい関係がキープされている。なんと絶妙なバランスだろう。彼らはこのまま、おとなになっていくんじゃなかろうか。おどろき見まもっているうちに、ポスターがつくられていった。途中で字をまちがえたりもしたけれど、がんばって、もういちど1から書きなおして、5人のチカラをあわせたポスターが完成した。チームのなかでまとめ役をしていたじゅんいちろうくんが、発表をすることになった。うまく説明できなくてうつむいているじゅんいちろうくんを、みんながかわるがわるフォローしはじめた。がんばれ、がんばれ。