11月28日、産休前さいごの日。(妊娠35週1日)

 産休前さいごの1日。朝の通勤ラッシュとのたたかいも、きょうまでだ。と思えばちょっぴりさびしくもなる。それにしても、今朝はいちだんと混んでいる。いよいよ師走がはじまるからかな。銀座線をわざと1本のりすごして、つぎにやってきた電車にのった。が、おなかをまもるのが精いっぱい。だいじょうぶですかと近くにいた女性が防波堤になってくれた。ありがとうございます。ひと駅だからがまんできたが、これでしばらくじっとしているのはたいへんだ。

 仕事場についたら、まずメールをチェックした。きょうの19時までにパソコンを会社へ返却しなければならない。午後に日赤医療センターの検診が入っているので、それまでにできることはなるべく済ませたい。週明け12月1日から掲載するWEB原稿の返事がまだきていない。ぎりぎりまでやりとりすることになりそうな予感。できることからかたづけよう。休暇中にチームで共有しておきたい資料をつぎつぎにメールに添付して送って、就業管理システムに入力をする。この就業管理が手間がかかってとてもニガテだ。が、いまはそんなことをいっている場合ではない。集中してやると、意外に早く終わった。いつもこのくらい集中できればいいのになあ。デスクトップにまだあるデータをCD‐Rに保存して、お世話になったみなさんにごあいさつを送ってしめくくるつもりだったが、CD‐Rがないのでごあいさつを先に書く。思ったより時間がかかってしまって、ここで検診に出かける。そうすけはどこまで大きく成長したのかな。

 日赤医療センターに着いて受付を済ませると、まずは採血へ。課題になっていた、甲状腺ホルモンのバランスは改善されただろうか。採血が終わると血圧と体重をはかり、検尿を提出して、医師の診察を待つ。きょうは、どのくらい待つだろう。心づもりはしているが、なるべく早めに終わって仕事場にもどりたい。と思っていたら気もちがつうじたのか、すぐ診察室によばれた。
「こんにちは」
「神戸海知代さん、ですね」
きょうは、若い男性の医師が担当だ。30代前半だろうか。独身かな。どんなきっかけで産婦人科医をめざしたのかききたくなるくらい若く見える。いのちが生まれる瞬間をまもりたい、とか、あつく語ってくれるかな。妄想がひろがる。診察に集中しなければ。まずは経腹エコー検査から。ベッドに横になる。
「ここが、あたま」
「おっ、でっかくなりましたね」
「ここが、ろっ骨」
「きれいに、ならんでいますね」
ひとつひとつがうれしくて、いちいち合いの手を入れてしまう。大きくなったなあ。先生がサイズを測っているあいだ、じいっと見とれてしまった。
「ここが顔なんですけど。手でかくしているのかな」
「シャイですねえ」
「ポーズを決めているみたいですねえ」
あごに手をあてて、ハードボイルドを気どっているのだろうか。と、そうすけがゆっくり動きだした。先生はサイズを測っているが測りにくそうだ。
「よし。順調です」
「ありがとうございます」
血圧、尿タンパク、むくみ、異常なし。羊水の量も、異常なし。内診で産道の状態を確認、こちらも異常なし。採血の結果、甲状腺ホルモンはまだ改善の余地があるということで、つぎの検診まで投薬をつづけることになった。

 仕事場にもどったタイミングで、ちょうど原稿の返事がきた。やりとりしながらあいまをぬって、CD‐Rにすべてのデータを保存。19時をちょっぴりすぎてしまったが、なんとかパソコンを返却できた。おつかれさま。来週からいよいよ産休がはじまる。帰り道、駅まで歩きながら母と電話で会話した。