11月4日、そうすけウイルス。(妊娠31週5日)

 さっきからフォトスタジオからもらったデータを、なんども、なんども、見なおしている。きのうは、たのしかった。女性ばかりのスタジオだったので、自由にのびのびと撮影できたのもよかった。だんなも満足している。そうすけが生まれたらまた行こうね、と話している。たくさん撮ってもらった写真のなかの1枚を選んで、木製のパネルに加工してもらえる。どの1枚にしようかな。データをじっくり見くらべながら、だんなといっしょにおなかをさわってそうすけをたしかめている写真に決めた。このときほんとうに、そうすけが動いていたのでびっくりしていた。だんなの、はっとした瞬間の表情がおもしろい。

 マタニティフォトを撮りに行くまでは、こういう写真っていつだれが見るだろう?と思っていたけれど。いま、なんど見ても足りないほど気に入っている。木製パネルは寝室にかざって、毎日見えるところに置こう。ほかの写真も、DVDに閉じこめておくのはもったいない。フォトブックに加工するのもいいな。どの写真を本にのせようかな。また、はじめの1枚から見なおしはじめる。さっきからおなじことをなんどもやっている。なのに、あきない。あきないどころかどんどん気もちが高まっていく。そうすけウイルスにかかってしまった。と、だんなが仕事から帰ってきた。ビールをのみながらさっそく写真に見入っている。

 そうすけウイルスにかかってしまった人が、もうひとりいる。わたしの母だ。メールがくるたびに、マタニティ用品の専門店に行ってきたのがわかる。わたしよりもひんぱんにかよっているようだ。いまも、こんなメールがきた。
「きょうも、かわりはないですか。ベッドガードはありますか。ベッドの木枠から赤ちゃんをまもるため、あたまのまわりに置いておくものだけど、これもあったほうがいいよね。ちょっとお店に行って見てきます。ベビーバスはもうたのんであるから、だいじょうぶ。だけど、それにつかうポンプがなかったよね。こっちもたしかめてきます。それではいまからお店にいってきます」
ベッドガードのことまで考えていなかった。母の動きの早さには、すでについていけなくなっている。この夏には入院していた母がこんなにアクティブになれたのも、そうすけウイルスのしわざにちがいない。おそるべしパワーだ。