2月9日、母の電話。(生後47日)

 午後、そうすけをあやしていると、母から電話がきた。そうすけがどうしているのか、ききたくなったようだ。このごろ、ちょくちょく連絡がくる。
「いま、なにしているの」
「そうすけを、あやしているよ」
「うふふふ、こんにちは」
「ほら、おばあちゃんだよ。そうすけ、こんにちはって」
会話ができるわけではないが、そうすけの耳に電話をあててみる。ああー、だとか、ううー、だとか、返事をしたらひと言もききのがすまい、と、母も、わたしも、集中している。が、いまにも寝てしまいそうだ。ちょうどおっぱいをのんだあとで、おなかがいっぱいだからかな。またつぎにしようね。母はとても残念そうにしている。
「このごろは、しっかり眠れているの」
「うん、ぶつ切りだけど」
「そろそろ、すごしやすくなるよ。おっぱいにもリズムが出てくるから」
「出てくるかなあ」
「出てくるよ」
「しょっちゅう、泣いているよ」
「よかったね。おいしいおっぱいだから、はなれられないんだよ」
「あははは、そうかなあ」
「よく泣くのは、元気な証拠。あんまり気にしすぎないようにね」
母は、わたしの神経質なところを、よく知っている。
「うん」
「泣きやまなかったら、だっこする。だっこしても泣いていたら、歩きまわるといいんだって。このまえ、テレビでいっていたよ」
「歩きまわる、か」
「むかし母さんもよくやっていたけれど、やっぱり根拠があったんだね」
「やってみる」
まんまるだっこスクワットもなれてきたのか、効きめがなくなってきたようなので、ちょうどよかった。歩きまわり作戦と組みあわせてみよう。
「あたたかくなったら、会いにいくからね」
あらら、また電話の向こうにいるそうすけに話しかけている。
「いつでもきてね」
そうすけのつもりで、高い声でこたえる。
「3月なら、おばあちゃんの顔を見ておぼえてもらえるころでしょう」
母はわたしより、そうすけの成長をよく知っている。さすが経験者だ。