3月6日、ほしがる本能。(生後72日)

 おっぱいをあげながら、ぼんやり考える。いまは、昼2時間おき、夜3時間おきのペースでのんでいるけれど、4月の入園に向けて、授乳回数を調整したほうがいいのだろうか。保育園に入ると、昼も夜も3時間おきにあたえると書いてある。先生にきいてみたところ、だいじょうぶですよ、個人差があるのでそこは様子をみながらやっていきます、といわれてひと安心した。冷凍母乳をもってきてもいいそうだ。とはいえ、1回あたり140ccから180ccのミルクをのむ時期に、1日ぶんの冷凍母乳を準備するのはムリだろう。実際にやればできるもんなのかな。わたしには、提供しつづけられる自信がない。保育園はミルク、家に帰ったらおっぱいにチェンジしようか。そうすると、そうすけがおっぱいをのまなくなったりするのだろうか。さびしい。それはいやだな。

 母乳には、催乳感覚(さいにゅうかんかく)といわれるものがあって、2時間から3時間ごとに新鮮な母乳がわきでるしくみになっている。赤ちゃんはこの催乳感覚を察知していて、新鮮な母乳がわきでる2時間から3時間ごとに母乳をほしがる本能があるという。いのちのしくみは、すばらしい。もちろんこれは、赤ちゃんの体内時計がしっかりしているときのことで、生活のリズムが乱れるとたちまちその能力が発揮できなくなる。おっぱいをあげるときに、時間を決めてあげるのがいいか、泣いたときにあげるのがいいか、どっちがいいのか、と議論になることがあるけれど、催乳感覚を察知する赤ちゃんの本能からいえば、どちらも正しいことになる。だんなは泣いたらあげる派、わたしはタイミング派だが、夫婦げんかにならずにすんでよかった。

 ぼんやり考えながら、おっぱいをのんでいるそうすけを見ていたら、ふと目があった。こころのなかを見透かされたようでドキッとする。ごめん、ごめん。いまはおっぱいに集中しよう。そうすけがしきりに、髪をかきあげるしぐさをしている。かきあげるほどの髪の毛がないのに。しばらく見ているうちに、やっと理由がわかった。このしぐさ、わたしとおんなじだ。いま、まさに前に垂れてくる髪をかきあげていた。するどい観察力をもっているのだ。