3月14日、ことばあそび。(生後80日)

 生後2か月の赤ちゃんが、アイ・ラヴ・ユー、と話している動画をSNSで見つけた。お父さんのひざの上にのって向かいあいながら、なんども口まねしているうちに発音できるようになったらしい。かわいいなあ。目の前でこんなことをいわれたら、ぎゅっとしたくなる。そうすけも、意外にできちゃったりして。ちょっと、ためしてみようか。思いたったら、そうだ、ためしてみよう。

「そうすけ、だいすき」
「だいすき」
「だーいすき」
だいすき、という言葉が、そうすけはだいすきだ。気もちが伝わっているからなのかな。満面の笑みがかえってくる。だいすき、だいすき、だいすき、そうすけのことが、だーいすき。繰りかえすうちに、きゃっ、きゃっ、と、からだをよじりながら笑いだした。この笑顔をずっと見ていたくなる。言葉そのものは、やっぱり発音しにくいみたいだ。濁音だから、むずかしいのかも。
「そうすけ、あいしてる」
「あいしてる」
「あ・い・し・て・る」
あい、と口が動いた。こっちのほうがいいやすいのかもしれない。あい、だけでも十分うれしい。あいしてる、と、ありがとう、をいえる人になろう。

 だんなは、メロディーにのせて発音させるつもりだ。そうすけと向かいあいながら、ぶんぶんぶん、の歌をうたっている。ぶんぶんぶん、はちがとぶ、ぶんぶんぶん、はちがとぶ。なんども繰りかえしているうちに、そうすけのくちびるがぶ、のかたちになっていく。ぶんぶんぶん、ぶん、ぶん、ぶん。だんなの歌に熱がこもっていく。力みすぎて、はちもとべなくなってしまいそうだ。そうしているうちに、そうすけの口が動いた。ぶん。いま、ぶんっていったよ。大さわぎになってしまった。もういちど、ぶん。ぶんぶんぶん、は近いかも。

 じつは、ぶんぶんぶん、より先におぼえた歌がある。大きな栗の木の下で、の歌だ。なんども繰りかえしうたっていると、そうすけの口が動いたのだ。そしてうたったのだ。大きな、とはっきり。だんなはまだ信じてくれないが。