3月15日、レストラン初体験。(生後81日)

 大学時代の友人がふたり、うちにあそびにきた。大崎駅の改札口までむかえにいった。あいかわらず、にぎやかだ。さんぽがてら五反田にあるイタリアンレストランに寄り道して、ランチをたべた。だんなとそうすけもいっしょに、5人で食事をした。そうすけは、あとでおっぱいのスペシャルランチをとろうね。生まれてはじめてのイタリアンレストラン。はじめてかぐ料理のにおい、はじめてきく店内の会話、ここちいい音楽。そうすけはうす目を開けて、その様子をじっと観察している。おとなたちが食事をしながら語りあっている姿を見て、なにを感じたのだろう。この世をもっと、すきになってくれるといいのだが。

ベビーカーか、だっこひもか。どちらでレストランに行くほうが負担がすくないだろう、と迷っていたら、だんなが、だっこひもで連れていくからいいよ、と手伝ってくれた。ありがたや。そうすけもおとなとおなじ目線で見たほうが、いろいろたのしめるにちがいない。だんなはそう考えたのだろう。そうすけ、うれしいね。食事がほとんど終わったころ、ビールを3杯おかわりしただんなが立ちあがった。トイレに行くという。そうすけをあずかろうとしたら、このままでだいじょうぶだという。もどってきただんなにきいてみると、個室ならだっこしたままで十分対応できるそうだ。ひろくてきれいなトイレでよかった。

 部屋にもどると、友人がかわるがわるそうすけをだっこしてくれた。
「かわいいねえ、そうすけくん」
「もう、連れて帰りたくなっちゃうよー」
「連れていってもいいよ。でも、おっぱい、たいへんだよー」
「うーん、やっぱりムリ」
「おっぱい、出ないもん」
友人の腕のなかで胸に寄りそうようにして、そうすけは気もちよさそうに目をつぶっている。みんなの愛情をたっぷりもらって、しあわせそうに目をつぶっている。将来はなんになるだろうね、といわれて考えた。なんになるかはわからないけれど、自分のちからで生きていける人になってほしい。それだけだ。