3月19日、完母、完ミ、混合。(生後85日)

 わたしの母は、兄を母乳、わたしをミルクで育てたという。兄がおっぱいを吸いつくして、わたしが生まれたときには空っぽになってしまった、と母がジョークにするくらい、子どものころの兄はおっぱいがだいすきだったそうだ。乳ばなれがどうしてもできなくて乳首にからしをぬったとも、きいたことがある。わさびはよくたべるのにからしがニガテなのは、そのときの体験がトラウマになっているにちがいない、と兄が本気でうたがっているほどだ。

 わたしもミルク育ちだった、とママ友のYさんが教えてくれた。ちょうどいまのママのママの世代がミルク派だったといわれている。45歳のわたしの母は、いわばその最先端だったのかもしれない。赤ちゃんの育て方については、完母=完全母乳、完ミ=完全ミルク、混合の3タイプにわかれていて、たがいのメリットやデメリットがたびたび議論されている。どのタイプで育てるのがのぞましいかについては、ママと赤ちゃんの生活スタイルによって選択肢がわかれるのが当然だろう。ママと赤ちゃんになるべく負担のかからない方法が、いちばんだ。わたしは、完母に近い混合だ。10回のうち9回は、母乳をあげている。風呂あがりの1杯は、哺乳びんに入れたミルクをだんながのませるようにしている。そうすけとだんなのコミュニケーションタイムだ。完母をすすめる人も多いが、そこまで徹底できるほど自信がないし、いざというときそうすけを母親以外のだれかに世話してもらうことも考えたらやっぱり混合のほうがいいだろう、と思ったからだ。とはいえ、これでいいのかどうか、そうすけにとってもベストなのかどうかは、わからない。いまも手さぐりの毎日なのだ。

「将来、履歴書に母乳かミルクか、書くわけじゃないからね」
「履歴書に、おっぱい卒、かあ。おもしろそう」
「お前、混合? おれ、完母! みたいな」
「それ、うけるわー」
「のんだミルクのこと、おとなになったら気にしていないし」
「母乳でも、ミルクでも、赤ちゃんがおいしくのめればいちばんだよね」