4月1日、生えてきたかも。(生後98日)

 その日は、いきなりやってきた。おっぱいをあげているときに突然、強烈な痛みがわたしの乳首をおそったのである。見ると、なんと、そうすけの下の歯ぐきから歯が生えているではないか。ちょこんとのぞいたちっちゃな白い歯は、おっぱいをあげるときはニクいやつだが、にかっと笑ったときはかわいくてたまらない。あと2日で生後100日めでお食い初めをむかえるが、まさかこんなに早く歯が生えてくるとは。その成長の早さにおどろくばかりだ。

 という、エイプリルフールのジョークはさておき。このところ、そうすけが右手をしょっちゅう口のなかに入れるので、気になっていた。おっぱいをほしがっているのかおしゃぶりをしているのだろう、と、はじめのうちは思っていたけれど、授乳のすぐあとにも右手を口のなかにつっこんでぐりぐりしているではないか。そうすけをだっこしてげっぷを出そうとしているときに、背中をそらせながら大きなあくびをした瞬間を、だんなは見のがさなかった。
「おおっ、うっすら歯が見える」
なんと、上の歯ぐきにも下の歯ぐきにも、白い歯が透けて見えている。どのくらいで出てくるのかはわからないが、たしかにある。おそらく口のなかがもぞもぞするので、しきりに手をつっこんでいたのだろう。ほかにも見ていると、舌をぐるぐる動かしながら口じゅうをなめまわしている。よだれも以前はカニさんよだれだったのが、ほほをべたべたぬらすほど唾液の量がふえてきた。

 歯が生えると離乳食だってたべられるようになるし、よろこばしいことだとはもちろん思うけれど。授乳中に噛まれたときの痛みを想像すると、こわくてなんとかして逃れたい気もちもわいてくる。歯が生えたら生えたで歯みがきを教えるのがひと苦労なんだよと、きいたこともある。そういった新しい課題も、これからつぎからつぎへとやってくるだろう。成長は予想を超えたタイミングでやってくるのだ。うれしいようなうれしくないような、ビミョーな気分だ。