4月11日、めざせ世界一。(生後108日)

 ゴルフの世界一を決める試合が、きのうからはじまった。アメリカで行われるマスターズとよばれる大会だ。日本との時差があるため、テレビ中継は早朝の4時半から放送される。ちょうどそうすけの夜2回めの授乳が終わったタイミングで放送がはじまった。だんながさっそく起きてきて、そうすけのおむつをとりかえてくれた。わたしはベッドにもどってもうひと眠りしたが、だんなはマスターズを見るためリビングに残った。だからここから先はだんなの体験談になる。わたしが寝ているときに、おもしろい出来事があったそうだ。

 そうすけは明け方の授乳が終わったらたいてい、そのまま寝ようとしないでおめざめモードになる。朝早い時間からいきなり、かまってモード全開になることも多い。今朝もそうだったようで、だんながテレビでゴルフ中継を見ているといきなりベビーベッドから、ねえねえあそぼうよーとよびかけるように泣き声がきこえた。そこでだんなは、そうすけをソファに連れてきて自分の太ももの上にすわらせ、上腕で上半身を支えながらいっしょに試合を見たそうだ。世界でいちばん美しいといわれるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブは、テレビ画面で見てもグリーンがはっとするほど美しい。そうすけもくぎづけになって、いっさいぐずらず試合に集中していたそうだ。赤ちゃんは原色系のシンプルな色に興味をもつといわれているが、そうすけも例外ではなかった。

 はじめのうちは、きれいなグリーンをただ見ているだけだろうと思っていただんなも、あっとおどろく瞬間が6時過ぎにやってきた。世界ナンバーワンプレーヤー、ローリー・マキロイ選手が、きょうは調子がよくないようで予選落ちのピンチに立たされていた。そんななか、13番ホールの5打であがればパーのロングホールで、なんとマキロイ選手はイーグルを決めた。3打であがったのだ。ミラクルを目の当たりにしたとたん、それまではグリーンに見とれていたはずのそうすけが、ガッツポーズをしたそうだ。イーグルパットを決めたマキロイ選手に同調して、激しく腕を動かしただけなのかもしれない。が、ふしぎなことに、ほかのプレーヤーがどんなにすごい技を見せてもそうすけは反応しなかったらしい。世界一のマキロイ選手のときだけ反応するんだよね、と。

 だんながマキロイ選手を応援していてよろこんだしぐさを見てまねしたんじゃないの、ときいてみると、それはありえない、と、だんなが力説する。なぜならだんなが応援していたのは、マキロイ選手ではなくてジェイソン・デイ選手だったからだ。そうすけは自分の意思で応援していたことになる。いやもしかすると自分が世界一になる日のことを考えているのかもしれない。