4月6日、つよい、つよい。(生後103日)

 まだ声が出ない。朝7時がくるとすぐ近くの内科にウェブ予約を入れた。のどの痛みも鼻水も、ずいぶんよくなった。あとは声だけだ。声が出なくなってから1週間がすぎている。そうすけに歌をうたってあげることも、話しかけることも、本を読んであげることもできない。とはいえ、じっとだまっていられない性質なので、しわがれ声でうたいまくっているのだが。音程がとれないぶん、ラップのようにきこえる。しばらくはこれで、がまん、がまんだ。

「こんにちは」
「どれどれ、のどを診ましょう。奥のほうにまだ炎症がありますね」
ちゃんと声が出るようになるまでには、まだ時間がかかりそうだ。7日ぶんの薬をもらって、ひきつづき様子をみることになった。しっかり治るまで待とう。
「赤ちゃんに、かぜの症状はありますか」
「鼻水も、せきも、出てないですね」
「うつらなくて、よかったねえ」
ほんとうだ。つよいぞ、そうすけ。こんなにしつこいかぜにも、そうすけはびくともしなかった。この調子なら保育園で熱を出してよばれることもないだろうとさえ思えてくる。すでに保育園デビューしたママ友は、たった2日あずけただけでかぜをもらってきた、と話していた。やっぱりたいへんそうだ。

 帰りにスーパーへ寄って、晩ごはんの食材を買った。そうすけは食料品の売り場がだいすきだ。なかでも、肉と冷凍食品のコーナーにやってくると、おめあての食材を見つけた主婦のように目をきらきらさせている。肉の赤い色や冷凍食品のパッケージのデザインが気になるのだろうか。残念ながら、まだたべることができないので、見てたのしむだけだが。近い将来、もりもりお肉をたべているのだろうか。おっぱいをのんでいる顔からは想像できないけれど。

 スーパーを出て目黒川沿いをベビーカーでカタカタすすみながら、花がほとんど散った桜をながめる。もう目の前に、つぎの季節がやってきている。