5月2日、ちょうど一年後。(生後129日)

 いよいよゴールデンウィークがはじまった。SNSを開いたら、みんな思い思いに連休をたのしんでいる。ダイビング仲間が海で撮った写真をつぎつぎにアップしていた。写真を見るだけで、潮の匂いや光、水温、水圧が、まるでそこにいるかのように、あたまからつま先まで感じられる。海、海、海に行きたい。もちろん、この連休に行けないのはあたりまえだが。いつかそうすけがダイビングをたのしめる年になったら、親子3人でもぐりたい。中性浮力をとりながら手をつないで写真を撮りたいなあ。その日が待ちどおしい。

 去年の5月2日には、まだ妊娠に気づいていなかった。夜、那覇に入り、翌日からの粟国島ダイビングに向けて準備していた。粟国島での体験は、生まれてはじめてだといいきれるほどすばらしいものだった。まるで、海のなかで盛大なお祭りが開かれているみたいだった。ギンガメアジ、ロウニンアジ、イソマグロ、ナポレオンフィッシュ、カマス、カスリハタ、ヤイトハタ。巨大なトルネードが変幻自在に動きながら、わたしたちにすり寄ってくる。まるで、話しかけられているみたいだった。歓迎してくれたのだろうか。いまから思えば、新しいいのちの誕生を祝ってくれたのかもしれない。いや、わたしが気づかずにいたから、おなかに赤ちゃんがいますよと教えてくれていたのかもしれない。けっきょく滞在中はずっとダイビングをしていたが、夜になったら眠くなって、すきなビールもそこそこにぐうぐう眠っていたんだっけ。

 あれから1年。いまこうして、そうすけといっしょに暮らしていることをいまも奇跡に感じている。粟国島で見たトルネードのように、大きな流れのなかにのみこまれている感覚だ。でも、ふしぎといごこちがいい。流れに逆らうことなく自由自在に泳いでいけそうだ。きっと、だいじょうぶ。これからもうまくやっていけるだろう。きょうのそうすけは平熱にもどったが、せきと鼻水はもうちょっと残っているので、大事をとってゆっくり過ごすことにした。あたたかくなってきたので、あせもに気をつけよう。昼間、買いもののついでにすこしだけおさんぽをして、シャチのかたちのバルーンを買った。ふわふわ空を泳ぐシャチを見ながら、そうすけがはしゃいでいた。家に帰ると、バルーンのひもをひっぱってシャチが動くたびに、きゃっきゃっ、と大よろこびしていた。