6月20日、側線がほしい。(妊娠12週1日)

 ワールドカップの日本対ギリシャ戦が終わってから、打合せがある仕事場へ向かう。0対0の引き分けだった。前半38分、主将のカツラニス選手が2枚めのイエローカードで退場、ギリシャが10人になった。日本は11人。これは勝てる、と、思いこんでしまった。思いこみは、きけんだ。勝つのは、たいへんだ。現実を目の当たりにして、もんもんとしていた。通りを行きかう人たちも敗戦の余韻を引きずっているのだろうか、どこか、ぼーっと、しているように見える。JRの改札を出て地下鉄の改札へ向かっていると、前から歩いてきた人と、あやうくぶつかりそうになった。あぶないぞ、気をつけないと。

 人混みを見ると、ダイビングのときに出会った魚群を思いだす。玉やトルネードとよばれる、ものすごい数の魚の群れだ。あんなにたくさんいても、群れて泳ぐ魚はぶつからない。ぱっと同時に方向を変えることができる。なぜなのか。魚には側線という器官がついていて、水流や水圧のわずかな変化も察知できる。この側線のおかげで、光が届かない深海でも、にごった水のなかでも、まわりの様子を把握して獲物を確実にとらえることができちゃうのだ。反応速度は、およそ0.15秒。ヒトの反射神経は最速でも0.2秒といわれるが、それより速いスピードだ。だから、みんながほぼ瞬間的に方向転換できちゃうわけだ。うらやましい。ヒトにも側線があればいいのに。側線がついてないのは、きっと、もっと、すぐれた能力をそなえているからにちがいない。

 18時から、仕事場のキックオフパーティーがあったが、1次会できりあげて、帰ることにした。重ね着をしていたのに、エアコンでからだが冷えきってしまった。たくさん人がいたので、冷房をつよくしているのだろう。これから夏本番に入ったら、冷え対策を心がけようと思う。いつもなら素足にサンダルをはいていたけれど、靴下を活用しよう。きゅんと冷えたものがほしくなるけれど、氷をぬいてもらったり、あったかいものを選ぶようにしよう。