7月5日、指が長い。(妊娠14週2日)

 9時半から、妊娠検診。5時からサッカーの試合を見ていたので、よゆうで準備できる。と思っていたのだが、ぎりぎりになってしまった。婦人科の受付で、健康保険証と診療予約カードを提出する。
「妊婦健康診査受診票はありますか」
「あ、はい」
「1回ぶんだけ切りとって、記入してきてくださいね」
「すみません」
「あと、母子健康手帳も」
そうだ、そうだ、4点セットだ。おぼえておかないと。受付を済ませると、前回とおなじように血圧と体重を測って、名前をよばれるまで待つ。だんなは本を読みながら待っている。わたしも本をもってくればよかった。

 ベッドのある診察室に案内された。だんなもあとからやってきた。これも前回とおなじだ。しばらくして、経腹エコー検査がはじまった。
「分娩の予約、どうなりましたか」
「予約はとれたんですが、初診が7月23日までいっぱいで」
「そうですか」
先生には、ほかにすすめたい病院があったようだ。分娩の予約ができたことを伝えたとたん、会話がとだえてしまった。先生すみません。でも、病院をかえる気はない。いっぽうだんなは、目をきらきらさせてモニターを見ていた。
「おぉ、元気そうですねえ」
「順調ですね」
「大きくなったなあ」
モニターはだんなに向いていて、わたしからは見えない。先生とだんなの会話をきいていた。きょうのそうすけは、どうやら眠っているようだ。
「あ、動いた」
「起きたのかな」
「あ、いま、手を動かしているよ」
そろそろ、わたしも見たいんですけど。ひととおり会話が終わると、こちらにモニターが向けられた。
「順調ですよ」
元気そうで、よかった。でも、わたしのときは、じっとしている。
「おとなしいですね」
「寝てますね」
「子宮筋腫、だいじょうぶですか」
「いくつかありますが、まあ、心配ないですね」
念のため、筋腫のサイズをたしかめてくれた。いまのところ大きさはかわっていないようだ。ほっとした。

「そうすけ、きれいな手をしていたなあ」
ランチをたべながら、だんながうっとりしている。わたしは見ていない。
「どんな手だった」
「指が長かった」
「じゃあ、わたし似だ」
だんなの指は短い。わたしは長い。ついつい、勝ちほこった気分になる。
「グー、パー、していたよ」
「グー、パー」
「そうそう、グー、パー」
ふたりで、そうすけのまねをしてみる。指が長い。やっぱり、わたし似だ。似ていて、よかった。そうすけが生まれたら、3人で、グー、パー、しよう。