ランチタイムを利用して、日赤医療センターへ行った。マタニティクラスの予約をするためだ。マタニティクラスとは、これから出産する妊婦やその家族が妊娠、出産、育児について学ぶ、いわゆる母親学級のことだ。産科外来の専用カウンターにおいてあるノートに記入して申しこむ。電話での申しこみは受けつけない。そのうえ、平日の9時から17時までしか予約を受けつけていないので、はたらく女性は予約をするだけでもたいへんなのだ。17時になると、個人情報保護のためノートがかたづけられてしまう。妊婦のシンデレラになったみたいだ。じつはきのうも予約をしに行ったのだが、すでにノートはなく、書きこむことができなかった。よーし、こんどはリベンジしようじゃないの。
さっそく、3階にある産科外来のカウンターへ。よしよし、ノートがおいてある。希望の日時に、ID番号と名前を書きこむだけだ。ところが、ない。空欄がどこにも、ない。枠外に名前を書いてはいけない、と注意書きがあった。キャンセル待ちもできないのか。できないのかしら。きいてもムダだろうなと思いながらも、職員さんに、出なおさないで済む方法をきいてみた。
「予約ノート、いっぱいなんですよね」
「予約がいっぱいですと、つぎの更新まで待っていただくことになります」
「つぎの更新ですか」
「毎月、月のはじめに更新していますので、つぎは、来週の月曜日、9月1日になりますね」
「なるほど、仕方がないですね」
「はい、そうなりますね」
やっぱり、ムダな会話になってしまった。でも、待てよ。いまこうして話しているあいだに、だれかがキャンセルしているかもしれない。もういちどノートを見なおしてみよう。まずは、妊娠クラスだ。1ページずつ上から下まで名簿をチェックする。すると、9月26日のところに2名ぶん空きがあった。ありがたや。だんなとわたしの名前を書きこむ。この日は平日だけど、だんなは休めるのかな。などと気にしている場合ではない。あとで、たしかめよう。さらに出産クラスのファイルをチェックする。最初のページから最後のページまで、3往復もしてみたけれど、キャンセルはなかった。来週、もういちど来よう。と思いながら、ふと壁に貼ってある紙を見ると、大学院生による出産特別クラス開催、の案内が出ているではないか。11月15日の土曜日、タイミングもいい。このクラスに参加しよう。くわしくは助産婦さんに声をかけてください。と注意書きがある。さっそく、助産婦さんへの面談希望カードを出して、名前を呼ばれるまで待つことにした。ところが、なかなか呼ばれない。45分が過ぎた。まわりで診察を待っていた人がつぎつぎに入れかわっていく。90分経ったら、出なおそうかな。そう思いながらウトウトしているところでよばれた。
「特別クラスをご希望の、神戸さんですね」
「はい」
「神戸さんの予定日は、来年の1月1日ですよね」
「はい」
「あぁ、すみません。このクラスの受講対象者は、来年の2月と3月に予定日をむかえる人になるんですよ。1か月早すぎましたね」
「えええ、そうなんですか」
「お待たせしてしまって、ほんとうにすみません」
「ああ、うん、だいじょうぶ、だいじょうぶ」
うん、だいじょうぶ。ちょっと、たしかめてみたかったの。と自分にいいきかせながら笑っていた。これだけ段取りがわるくなると、笑いがとまらない。