8月29日、パンケーキ愛。(妊娠22週1日)

 パンケーキが、たべたくなった。たべたい、たべたい、たべたい。いま行くしかない。と、おいしいパンケーキ屋さんを検索。銀座に評判の店があるそうだ。大阪の梅田にあるパンケーキとかき氷の専門店で、去年、東京に進出してきたそうだ。どれどれ、のぞきに行ってみよう。はらぺこで店に急いだ。

 地下鉄の銀座駅から10分ほど歩いた。最寄りは銀座一丁目だが、ラクラク歩いていける距離だ。店は、ビルの3階にある。エレベーターがなく、階段をのぼっていく。ちょうど3階に向かう途中の踊り場で、何人かの人がならんで座って待っているのに気づいた。みんな、女性だ。平日のランチタイムだからすぐに入れるだろう、と思っていたら、あまかった。列の最後尾にならんで待つ。と、店のお姉さんがやってきて、メニューを手わたしてくれた。
「こんにちは」
「こんにちは。パンケーキが焼きあがるまで20分ほどかかるので、先に注文をきかせてくださいね」
気もちいいほど、しゃきしゃき話すなあ。ショートヘアが似あっている。なにをオーダーしようかな。メニューを見ながら、迷うこと、迷うこと。
「練乳の白いパンケーキが、おすすめですよ」
「じゃあ、練乳の白、にします」
「のみものは」
「ホットのロイヤルミルクティーで」
お姉さんのおすすめがなかったら、かるく30分ほど迷ってしまいそうだ。階段の壁に貼ってある、パンケーキやかき氷の写真に見とれていると、あっという間にテーブルへ案内された。外に面したテーブルだ。まわりを見ると、ほとんどの女性が、パンケーキとかき氷をどっちもたべている。みんな、おいしいものにはよくばりだ。こんど来たときには、かき氷もたのんでみようかな。
「お待たせしましたー」
「きた、きた」
きれいな円のかたちをした、パンケーキ。分厚いとはきいていたけれど、ほんとうにぶ厚い。4センチくらいあるかな。見ているだけで、しあわせだ。外はこんがり、香ばしい。中はふんわり、もちもち。練乳アイスをのっけて、ひと口ほおばる。キャラメルバナナをそっとのせて、またひと口。あぁ、ゴクラク。これがパンケーキだよ、そうすけ。あっという間に、たべてしまった。

 ふう。ロイヤルミルクティーをのみおえて、ひと息。また来よう。お会計を済ませたときに、ショートヘアのお姉さんから声をかけられてびっくり。
「階段で3階まですみません。だいじょうぶでしたか」
「おかげで、おいしいパンケーキが、ますますおいしかったですよ」
「ここのパンケーキ、素材にこだわっているから、妊婦さんにもよくたべにきていただいているんですよ」
「妊婦さんも」
「予定日の1週間前だという方もいらっしゃって」
「臨月ですか」
「しばらく行けなくなるから、行けるうちにって」
「いいですねえ。パンケーキ愛、ですねえ」
「よかったら、また。来られるうちに、ぜひ、来てくださいね」
「ありがとうございます」
階段を下りながら、考えた。ショートヘアのお姉さんは、気づいていたんだろうか、わたしの妊娠に。気づいたとしたら、どこで気がついたんだろう。