朝から寝不足だ。すがすがしい寝不足だ。午前1時からはじまった全米オープンテニスの男子シングルス準決勝で、錦織圭選手が世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ選手を破り、決勝に進出した。グランドスラムでの決勝進出は、日本人でははじめてのことだ。歴史的な勝利に、すっかり目が覚めてしまった。試合が終わって、錦織選手がインタビューを受けたのが、午前4時ごろ。興奮のあまり立ちあがってテレビを見ていた。おなかも、いきおいよくぽこぽこ動いている。そうすけも起きて、ニュースをきいているようだ。
「そうすK、がんばったね」
「そうすK?」
「そうだ、きょうは、そうすK勝利の日」
「そうすK!」
だんなが、はしゃいでいる。そうすけと錦織選手が、合体してしまった。いまのこんな時代に生まれてくるなんて、ほんとうにたのもしいなあ。日本人も海外で自信をもって活躍できる。そのチャンスが手のとどくところにある。
錦織選手の軽快な動きに刺激されて、からだを動かしたくなった。ウォーキングなら、いいよね。近所のスポーツクラブに出かけることにした。その前にゆっくり風呂に入って、からだをほぐしておこう。いつものようにすきな雑誌をもちこんで、のんびり湯につかった。カツサンドの特集だ。読みながら夢中になってしまった。カツサンドか、最近たべてないなあ。これからウォーキングに行くところなのに、なにやっているんだろう。こんどタイミングのいいときにぜひ、あのページの店に行こう、と決意しながら風呂を出た。汗がひくのを待って服を着ると、さっそくスポーツクラブへ向かった。
時速6キロ、軽快なスピードで歩きはじめる。このペースで1時間くらいなら楽勝でしょう。15分ほど過ぎたあたりで、ウォーキングシューズのひもがほどけてしまった。20分歩いていったんブレイク、ひもを結びなおして、ふたたびスタートする。汗が出てきた。思った以上に、出た。このままあと40分、つづけられるだろうか。ウォーキングもひさしぶりにやると、けっこうハードに感じる。右足のつけ根が痛くなってきた。20分で、もういちどブレイクをとることにした。ラスト20分。右足になるべく負担をかけないように、大きめに腕を振りながら、リズミカルに歩く。15分、10分、5分。いよいよ、あと1分。あたまのなかは、すっかりカウントダウン状態だ。1時間を3回にわけてウォーキングしたのに、こんなに疲れるなんて。運動不足を実感した。