9月5日、底なし腹。(妊娠23週1日)

 食欲が、底なし沼だ。いつのまにか、たべても、たべても、たべられる体質になっているような気がする。先日もそうだ。このごろパンケーキにはまっているわたしは、銀座のカフェでストロベリーパンケーキを注文。パンケーキが2枚にバターとキャラメルソースがかかって、カロリーたっぷりだ。それを10分も経たずに完食して、ふと思った。やっぱり、パンケーキにはバターとメイプルシロップがいちばんだなあ。たべなおそうかな。いや、ちょっと待てよ。ここは、おなかいっぱいになって満足すべき場面でしょう。ついつい、カフェをはしごしそうになってしまった。きけん、きけん、気をつけないとね。

 午後、仕事でお世話になっているカメラマンの料理写真展に行った。わたしもだいすきな雑誌で、よく見かける写真の数々。こんなふうに一気に見られるなんて、最高のぜいたくだ。あらためて見ても、うっとりしてしまう。料理は、人生そのものだ。ポートレイトを撮るように、料理をつくっている人や、そのくらしに、ひとつひとつ、しっかり向きあっていく。そんな写真が、わたしはだいすきだ。会場でもらった作品キャプションリストを片手に、ゆっくり呼吸をするように、一枚一枚じっくり見ていく。よくたべる料理がある。はじめて見る料理もある。そのどれもに、くらしが、いのちが、息づいている。

 写真集も購入して、満足しながら会場を出た。あぁ、おなか、すいたなあ。なにたべようかな。遅めのお昼をたべて、仕事場にもどることにした。料理写真をたくさん見たあとなので、味覚もとぎすまされているようだ。おいしいものがいいなあ。銀座から新橋へ歩いていると、老舗のうどん屋さんがあった。ランチタイムではないが店は開いている。ここにしよう。店に入って案内されると、客はひとりだけだった。写真集を見ながらゆっくりできそうだ。
「いらっしゃいませ」
「にぎわいそば」
「うどんか、そばが、たべ放題になりますが、どちらになさいますか」
「えっ、えっ、どうしよう」
「じゃあ、どちらも、おもちしますね」
「あぁ、ありがとうございます」
きた、きた。わんこそばのような小さな椀に、うどんや、そばが、ちょこっとずつ盛られて出てきた。かわいらしいな。でも、6つもあるぞ。うどんに、細うどんに、そばが2つずつある。こんなにたくさんたべられるかな。そばにはいろいろなおかずが、ちょこっとずつ箱に詰められて出てきた。かわいらしいね。ちょこっとずつがいっぱいある。なのに、ぺろりとたべてしまった。