9月6日、そうすけの20年。(妊娠23週2日)

 お世話になっている広告制作会社の創立50周年記念展示会を観に、だんなと出かけた。わたしたちが子どものころに見たたくさんの広告を手がけている制作会社だ。社会見学にきている小学生か、とツッコミたくなるほどはしゃぎながら会場に入った。いつもコピーライターズクラブの打合せで会っている先輩が、入り口の近くでむかえてくれた。11時に開館したばかりなのに、すでに、人であふれかえっている。美術大学の学生と思われるグループもきている。むかしも、いまも、あこがれの会社にちがいない。
「こんにちは。土曜も開館直後から大人気ですね」
「うれしいわあ。ゆっくり、見て行ってね」
「ありがとうございます。いまちょうどね、エレベーターでのぼってきたときに美大の学生さんたちとすれちがったんですよ。すっごく満足そうな顔をしていてね、印象的だったなあ」
「あ、その、学生さんたち、開館の前からずっと待っていてくれて。展示会にいちばんのりできてくれたんだよ」
「ホント、うれしいですね」
「日本の広告もすてたもんじゃないね、なんてね」
その会社はわたしたちが生まれる前から広告をつくりつづけてきた。広告を見ていると、いままでどう生きてきたかがあらわになってくる。はじめておぼえた広告。小学校のころによくまねしていた広告。おしゃれを気にするきっかけになった広告。初恋を応援してくれた広告。泣いているときにもそっと笑わせてなぐさめてくれた広告。受験勉強の息ぬきにしていた広告。はじめてアルバイトをするきっかけをくれた広告。就職活動を元気づけてくれた広告。いまの仕事に就こうと思ったときに見た広告。だんなと出会ったころに見た広告。

 展示会の帰り道、だんなとお茶をしながら話した。わたしたちも、20周年だったね。ふたりがつきあってからきょうまで、もう20年が過ぎていた。あたりまえのようにすごしてきたけれど。だんなのあたまにちらほら白髪が見られるのも納得だ。20年なんてあっという間かもしれない。だが、人がひとり成人するには十分な時間でもある。そうすけは、どんな20年と向きあうだろう。