Diary

にんしん日記

44歳で妊娠、45歳で出産した神戸 海知代の妊娠・出産・子育てせきらら体験記。
妊娠を知った2014年6月6日からまる1年、1日も休まずつづった記録です。

1月7日、パパのおっぱい。(生後14日)

 あれれ、家に帰るとかみさんがリビングで爆睡している。そうすけの要求がはげしかったのかな。というわけで、きょうはだんなが代筆しますね。

 仕事はじめから3日め。いつもであれば、完全に正月ボケもふっとんでいるはずです。なのに、正月のたのしかった余韻からまだ抜けだせません。外出先への移動中や打合せを待っているスキマ時間に、タブレット端末に保存しているそうすけが生まれてからきょうまでの写真をながめています。しあわせな気もちにどっぷりひたりつつ、早くそうすけに会いたいなあ、という想いもふつふつわいてくる。そんな日々がつづいています。会ってまっ先にやりたいことは、沐浴と沐浴後のおへそのおそうじ。これが、たのしみで、たのしみで。

 以前の日記にも書いたとおり、沐浴中のそうすけの気もちよさそうなおやじ顔がかわいくて、かわいくて、たまりません。まったく泣かないし、そればかりかそうすけ自身も満足そうです。産後1か月はおへその消毒をおこたらないようにと助産師さんにアドバイスをもらっていたので、赤ちゃん用の綿棒に消毒薬をひたして、そうすけのおへそをていねいにケアします。そのとたんにぎゃん泣きしますが、それはそれでかわいい。ぎゃん泣きしたあとで眠るすやすや顔は、もっともっと、かわいい。つい酒がすすんでしまいます。

 かみさんはかなりお疲れモードのようで、晩ごはんもそこそこ横になってしまいました。そんな最中にそうすけの大泣きがはじまりました。おむつを見ても異常なし。ということは、おっぱいか。すでに搾乳したおっぱいをあげていたのでわたしの乳を吸わせてみるとどうなるかためしてみました。自分の左の乳首をそうすけの口に近づけてみます。すると、なんとわたしの乳首に吸いついたではありませんか。残念ながら乳は出ないので、ニセモノだと気づいたようです。そこでこんどは、右の乳首をそうすけの口にそーっと近づけてみました。まったく吸いつきませんでした。やっぱり学習したみたいですね。

 そうすけに乳首を吸われてみてはじめて、母親の気もちが理解できた気がしています。なんどもなんども子どもが泣いてよぶなか、何日も寝不足がつづくなかからだもこころもふらふらになって乳をあげる母親の気もちを。

1月6日、食卓の謎解き。(生後13日)

 そうすけとふたりきり生活2日め。まだおっぱいをあげるペースがつかめずにいる。いつ泣いて、どのくらいのんだのか、を記録しているうちに、法則が見つかるだろう、と思っているのだが。なかなかヒントが見つからない。この謎解きは解決するまでにもうしばらく時間がかかりそうだ。年末に書くことができなかった年賀状のつづきを書きながら様子をみてみよう。今年の年賀状の到着が大幅に遅れて、たいへんすみません。ただいま書いております。

 20時すぎ、だんなが仕事から帰ってきた。晩ごはんをつくるのがめんどうだなあと思っているところへ、おそうざいを買ってきてくれた。ありがとう。朝に炊いた玄米があるだけで立派なごちそうだ。食卓におそうざいをならべ、だんなはビール、わたしはジンジャーエールでカンパイ。ごはんがおいしいと会話もはずむ。きょうあった出来事を情報交換しながら15分くらいたったころだろうか、そうすけがわあっと泣きだした。ついさっきおっぱいをのませたばかりなのに、どうしたのだろう。おむつかな。たしかめてみたが、そこにうんちはなかった。おしっこもしていない。ちょっとあやしてあげるとうとうと眠りはじめたので、ベビーベッドに寝かせてふたたび食事をはじめた。するとまた泣きはじめるではないか。うむむむ。なぜだろう。だんなが気づいたように立ちあがって、そうすけをベッドから抱きあげる。そのまま食卓につれてきていっしょに座った。あれれれ、こんどはぴたりと泣きやんだ。3人でいっしょに晩ごはんをたべたかったのだろうか。いまはまだおっぱいしかのめないけれど、そうすけがのぞむならば、3人で食卓をゆっくりかこむのもウェルカムだ。

 夕食のあとひと休みしてから、お風呂タイムへ。だんなが沐浴させる。そうすけはうつぶせになって背中を洗ってもらうのがこわいみたいで、ぐいぐい身をよじりながらいやがる。こういうときにパパの大きな手があるとほんとうにたすかる。だんなも沐浴させるのをたのしみにしているので、需要と供給が一致してありがたい。ひとっ風呂あびてミルクをぐいぐいのんだとたん、そうすけはぐっすり眠ってしまった。明け方4時までたっぷり眠って、ほっとひと安心。

1月5日、そうすけの挑戦状。(生後12日)

「いってらっしゃーい」
「なるべく早く帰ってくるね」
きょうから、だんなは仕事だ。だんなが出かけている8時から20時くらいのあいだは、そうすけとふたりきりになる。正直いってドキドキだ。ちゃんとお世話できるのだろうか。2日前くらいからシミュレーションしているつもりではいるがまったく自信がない。もう本番なのか、と気もちがあせる。いつどこで大泣きしはじめるだろう、と思うとおっかなびっくりだ。それでも母親なんだから、平気な顔をしてどっしりかまえていたいものだ。できるだろうか。

 だんながいなくなってから、そうすけはすぐに泣きはじめた。おなかがすいているにちがいない。さっそくおっぱいタイムだ。いままでは右のおっぱいと左のおっぱいを交互にあげていたけれど、のむ量がふえてきたのか両方ほしがるようになってきた。たのもしい、と思ういっぽうで、きのうまで組みたててきた方程式が見事にリセットされてしまったことにあせりだす。いつ授乳をしてどんな配分で搾乳したおっぱいをあげるのがいいのか、すっかりわからなくなってしまった。こうなったら、動物的カンをもとにそうすけのメッセージを読みとっていくしかない。名探偵におまかせあれー、と盛りあげてみる。

 おっぱい以外にも、さまざまな挑戦状がそうすけからとどいた。まずは、口からぶくぶく出るあぶく。はじめは気にしていなかったがふいても、ふいても、とまらないのでおそろしくなってきた。ネットで検索してみるとわたしのほかにもたくさんの新生児をもつママが心配しているようだ。これは、カニさんよだれとよばれるもので、よだれが出やすいこの時期にはよくあることらしい。カニさんみたいでかわいいねえ、とほのぼのしながら見まもっていてもだいじょうぶ。つぎに、とまらないくしゃみ。アレルギー反応をうたがってしまいそうだが、たくさんくしゃみが出るからといって、この年齢でアレルギー体質と決める根拠にはならないそうだ。赤ちゃんの鼻の粘膜はデリケート。冷たい風や、ちょっとした刺激、温度の変化だけでも、くしゃみを連発してしまう。そうすけのくしゃみはぶわっしょい、と豪快で、たとえば、ちっちゃいおじさんがたちまち等身大のおやじに変身しているようだ。そして、くるしそうなしゃっくり。おっぱいをのんだあとなどによく見られるが、これは、食道や胃への刺激が横隔膜に伝わって横隔膜が反射的にけいれんをおこしているためだそうだ。しゃっくりそのものには害はなく赤ちゃんにとってはくるしくないので、心配しなくてもいいらしい。とはいえ、見ているとなんとかしてあげたくなってしまう。これもきっと、母をひきつけるいのちのしくみ、のひとつなんだろうなあ。

1月4日、いのちのしくみ。(生後11日)

 そうすけを見ていると、あっという間に1日がすぎてしまう。表情やしぐさのバリエーションが、どんどんふえてきているのだ。上目づかいでおねだりするそうすけ、ごきげんなそうすけ、セクシーポーズのそうすけ、ちっちゃいおじさん顔のそうすけ、反省することしきりのそうすけ、バンザイしてリラックスするそうすけ。日々の体験を思うぞんぶんたのしんでいるようだ。見ているわたしたちまで、たのしくなってくる。生まれてきてほんとうによかったなあ。

 おもしろリアクションのベスト3を、ならべてみると。
ひとつめは、沐浴をしているときのそうすけ。はじめのうちは、はだかになるたびに泣きじゃくっていたけれど、お風呂の気もちよさにすっかりめざめてしまったようだ。湯につかった瞬間に見せるちっちゃいおじさん顔に、いつも笑わされる。ほほおおぉ、と湯を愛でるような表情。はあ、ビバノンノ、と合いの手を入れてあげたくなる。わたしも大のお風呂ずきで何時間でも湯船につかっていられるタイプなのだが、そんな母親の血をひいているのかもしれない。
 ふたつめは、おっぱいをおねだりするそうすけ。いままではおっぱいが目の前にあるだけですぐにかぶりついていたが、このごろはちょっとちがう。乳首を近づけるといったんは顔をそむけて気のないそぶりをする。だんなやわたしが、どうしたのかなあ、と心配しはじめたところで、がばっとダイナミックにかぶりつく、というわけだ。こんな巧妙なじらしワザをどうして身につけたのだろう。顔をそむけた瞬間に舌なめずりをして挑発することもある。
 みっつめは、おむつ交換をオーダーするそうすけ。うんちやおしっこの状況によって、ビミョーに表情をかえてくるところがおもしろい。うんちのときにはふんばるときから泣いてアピールする。そうすけ、いきまーす、と教えてくれているようだ。おしっこのときは、してしまったあとで報告をするように泣き声をあげる。うんちのときはおしっこのときよりも、泣き顔がわかりやすい。情報処理をどこかで学んできたみたいだ。参考にさせてもらおう。

 まだまだこれからも、いろいろな変化が見られるにちがいない。そう思うと24時間目がはなせなくなる。もともと、そんなふうにしくまれて生まれてくるのかな、赤ちゃんって。すばらしい、いのちのしくみ、だと思う。

1月3日、かわいい進化。(生後10日)

 きょうは、来客もなく、親子水入らずの日。そうすけは、ひと眠りするごとに成長していく。1日1日だいじに、だいじに、すごそうね。そうすけのベビーベッドは、リビングのソファーのとなりにおいてある。リビングからも、ダイニングからも、しっかり見える場所だ。だんなは、そうすけのあたまのかたちを気にしていて、寝かせるたびにあたまを左右交互に向けている。吸引分娩だったこともあって、そうすけのあたまはちょっぴり縦長にゆがんでいる。だんなも自分の後頭部が絶壁気味なのを、おとなになったいまも気にしているという。退院後2日めまでは、ソファー側に首を向けるとなんともなかったが、人のいない反対側に首を向けるとさびしいのか、よく泣いていた。それが、2日後の夕方ごろからだろうか、ソファーの反対側に向けた顔が、いつのまにかソファーのほうに向いているのを見てびっくり。逆にダイニングにいると、反対側に顔の向きをかえて目が合うことも。まだ、首もすわっていないうちから、どんどん動きはじめている。そんなそうすけがたのもしい。見るたびに、はっとさせられる。

 もうひとつ、たのもしいこと。それは、日に日に進化していく、そうすけとのコミュニケーション。おむつを交換するときには、かならずといってもいいくらい、そうすけは泣いている。服を脱いだらぶわっと冷たい空気が寄せてくるのとおしりふきのひんやり感をいやがっているのだろう。おむつをとりかえるたびにぎゃん泣きしているが、いちいち気にしないことにしている。が、進化はいきなりおとずれた。沐浴の前にうんちをしていたので、おむつをとりかえることにした。やっぱりぎゃん泣きだ。よしよし、と、あやしながら沐浴タイムへ。おろしたての服に着がえたそうすけは、ごきげん、ごきげん。さらに風呂あがりのおっぱいタイムで、ゴクラク、ゴクラク。授乳が終わると背中をかるくたたくようにしてゲップを出す。しかし、ばぶっと出てきたのは、大きなおならだった。この大きな音からすると、うんちもセットになっているにちがいない。せっかくお風呂に入ってからだをきれいにしたばかりなのに、あーあ、もったいないなあ。ふたたびおむつタイムへ。いつもならここでぎゃん泣きがはじまるのだが、今回は様子がちがう。ベビー服の袖にあたまをかくして、必死に泣くのをがまんしているのだ。ああ、やっちまった、と反省しているようだ。自責の念を感じているのだろうか。そういえばおならをした瞬間にも、どうもすみません、といいたげな目をしていた。いじらしいよなあ、そうすけ。

1月2日、寝ても、覚めても。(生後9日)

 あらためて、あけましておめでとうございます。10日間、日記をだんなにあずけているうちに、年が明けてしまいました。ごめんなさい。そして、ほんとうにたすかりました。ありがとう。おかげでたっぷりリフレッシュできました。こんなに長い休みをとったのは社会人になってはじめてかも。結婚式の前日も、家族みんなで食事をしよう、と、わたしから誘っておきながら、編集室にカンヅメになって午後10時まで待たせたり。父が入院していたときの看護も、仕事のない週末や出張ついでに新幹線で行き来したり。自分のことばかり優先していたように思う。でも、そんな生活の日々ともさようならだ。

 いまは、24時間おっぱいのことばかり考えている。寝てもおっぱい、覚めてもおっぱい。わっしょい、わっしょい。毎日がおっぱい祭りだ。そうすけは、うれしいことにおっぱいをたいへんじょうずにのんでくれる。のみたいときにのみたいだけ、おっぱいが出るといいのになあ。出産してからまだ体調が万全でないため、おっぱいの出る量にもばらつきがあるようだ。搾乳をして1回ぶんにのむ量がかたよらないように心がけている。それでも理想のバランスになるまでにはまだまだ修行が必要だ。たかがおっぱい、されどおっぱい。

 午後1時、退院後はじめてのそうすけの健康チェックをうけるため日赤医療センターへ行った。おっぱいの状況をはじめ、おしっこやうんちの出ぐあいも報告して、体重を測定した。退院時から66グラムふえていた。30日午後に退院したからちょうど3日め、1日あたり22グラム増だ。助産師さんのアドバイスによると、1日あたり25グラムから30グラム増にしていきたいとのこと。搾乳の量をふやしましょう、とアドバイスされてこまった。おっぱいが3つにふやせたら、いいんだけど。ちょっとずつ頻度をふやしてみよう。

 健康チェックのあとわたしが内科の受診をうけるため、そうすけを産科のナースステーションにあずかってもらって救急外来の受付へ向かった。年明けの救急外来は診察を待つ老若男女でごったがえしていた。けっきょく、受診までに2時間半、薬をもらうまでに30分かかった。それでもこれで健康が手に入れられると思えば待つのもウェルカムだ。いまわたしは、膀胱炎をなおすための抗生剤と痛み止め、貧血を予防する鉄剤、甲状腺ホルモンの分泌低下をおぎなう薬、むくみに効く漢方、胃薬、便秘薬をのんでいる。入院をしたのもはじめてだけど、こんなにたくさんの薬をのみつづけているのもはじめてだ。出産するまでは体力に自信があったが、実際に産んでみてやっぱり年齢を感じずにはいられなかった。コンディションの回復にはもうすこしかかりそうだ。

1月1日、あけましておっぱい。(生後8日)

 あけましておめでとうございます。ひつじ年はじめの日記、だんなが記念代筆いたします。2015年、平成27年元旦。東京地方は晴天の朝をむかえました。午前3時に授乳をはじめて4時すぎに終わりました。その後ベッドで横になり、しばし睡眠。かみさんより先に目をさましたわたしは、ベランダで一富士をおがむことができました。時刻は7時前。3時間ほどたっぷり眠れました。さっきの授乳でいつもよりたっぷり母乳をのませたからでしょう。

 11時30分すぎに沐浴をし終えると、かみさんの乳から直接ではなく、搾乳したおっぱいをのませました。70ミリリットルくらいかな。12時すぎにそうすけを寝かしつけると、昼寝をしようよ、と、かみさんに提案しました。かみさんの足がぱんぱんにむくんでいるのでマッサージをして、クッションで足を高くしてひと眠りしました。目がさめるとちょうど15時すぎ。また3時間寝ることができました。足のむくみもすこしだけ改善されたようです。

 生後1か月の赤ちゃんがのむ母乳の1回あたりの適量は、体重に0.15をかけて8で割った数字が目安になります。そうすけの体重は約2600グラムだから、ふさわしい母乳の量は48ミリリットル。50ミリリットルくらいが目安になります。おっぱいをしっかりのんだ赤ちゃんは、ぐっすり眠るそうです。また、母乳ではなく粉ミルクにした場合は消化に時間がかかるので、寝る時間も長くなるといわれています。いっぽうで、授乳の間隔があきすぎると胸が張ったり、しこりができたり、母乳の品質にまで影響をあたえてしまうそうです。母乳育児って、なかなかバランスがむずかしいものなんですね。

 そこで、母乳の品質のためにも、かみさんの負担削減のためにも、みんなのの睡眠時間確保のためにも、電動搾乳機をつかってみることにしました。手動搾乳機よりもストレスをかるくできるならうれしいですよね。大みそかの夜にネットで注文したところ、なんときょう元旦の夕方にとどきました。さっそくためしてみます。たしかに電動なのでラクラク搾乳できる。でも、手動よりも搾乳に時間がかかるようです。つかい方になれたらもうすこしうまくできるのかな。とにかく、ラクなところがいいですね。乳首が痛くならなければ、電動のほうがだんぜん便利です。しばらくつづけてみようと話しています。

 育児とは、子どもを健康に育てつづけることと、親の体調をケアしつづけることを両立させることなのだ、とつくづく実感した元旦でありました。

12月31日、主演男優賞2014。(生後7日)

 大みそか。年の瀬だろうと、授乳&搾乳の仕事は遠慮なしにやってくるんですね。2014年、うま年さいごの日記もだんなが書かせていただきます。

 きょうは、かみさんのお母さんが滋賀から新幹線にのってそうすけの顔を見にくる予定です。かみさんの兄夫妻もやってきます。かみさんのお兄さん、といえば、5日前に起こった未知との遭遇ぎゃん泣き事件を思いだすなあ。

 13時すぎにお母さんが到着。そうすけはすでにココロの準備ができていたようです。はじめは眠たそうに目をつぶっていましたが、かみさんのお母さん、つまり、そうすけのおばあちゃんがベビーベッドに近づいて、そうすけちゃん、と声をかけると、ぱあっと笑みを浮かべているじゃありませんか。その笑顔がおばあちゃんの笑顔にも伝染してしあわせモード全開。かわいいねえ、かしこそうだねえ、と、お母さんはすぐにそうすけのとりこになってしまいました。

 いっぽう、おとなだけで話をしていると泣いてアピールします。おっぱいは終わったばかりなのでおむつかな、とチェックをしてみると、なんにもでていません。あらまあ、やられたぞ。自分への注意をひくための演技だったんですね。泣くこと以外にも、そうすけは、おならをすることで注意をひく技術も身につけているようですね。おそるべし、主演男優賞級の演技力なのです。

 夕方、兄夫妻がやってきました。義理のおねえさんがお手製のおせち料理を差し入れてくれました。大、大、大感謝。東京で新年をむかえたことは、1度しかありません。2000年問題のときだったなあ。だから、東京ですごす正月になれていないふたりにはほんとうにありがたい差し入れなのです。そうすけは、というとしっかりおねえさんに色目をつかってアピール、だっこされると上目づかいの笑顔をふりまき、悩殺ポーズで魅了しまくっていました。

 さて、お兄さん。ぎゃん泣きのリベンジはできるかな。きょうはギャラリーも多いからでしょうか、泣きだすこともなく、気もちよさそうにだっこされています。もうすっかりなかよしになったね、と感心して見ていると、そうすけの足がつっぱっていて、なにげにお兄さんから身を遠ざけようとしているじゃありませんか。しかも顔はにっこり笑って、まったくいやがっていないのです。おとな5人で爆笑してしまいました。どうやらそうすけは、笑いのつぼもおさえているようです。俳優でも、お笑い芸人でも、どっちでもやっていけそう。

 いよいよ、おむつ交換タイムがやってきました。おしりを拭いているときにいきおいよくおしっこがとびだし、そうすけ自身の顔を直撃。きょとんとするそうすけ。またまた、おとな5人で大爆笑。演技力をそなえているというべきか、笑いのつぼをおさえているというべきか。これも才能だったりして。

お母さんと兄夫妻の帰りぎわ、おねえさんの手づくりおせちをならべてみんなで記念写真をパチリ。三段重を平置きにならべて、そのとなりにそうすけを寝かせて写真を撮ることにしました。ちょうどお重3つぶんの幅がそうすけの身長とぴったりで、これまた大爆笑。たのしい大みそかになりました。

12月30日、退院と出生届。(生後6日)

 えへへへ。きのうでしばしのお別れをいいましたが、本日も、だんなであるわたしが日記の更新をいたします。なぜなら、授乳頻度がどんどんふえているからです。かみさんの日記復帰までは、もうしばらくお待ちください。

 きょうは、待ちに待った退院の日。かみさんはおととい抜糸をして、下半身の痛みもちょっとずつやわらいできたようです。朝9時半ごろ、病室へむかえにいくと、退院の準備と並行してそうすけの世話をこなしていました。10時半には、退院にむけての新生児科面談をうけました。そうすけは、体重こそすくないけれどすこぶる健康のようです。それどころか胃腸のはたらきがよすぎるそうで、下痢になりやすく体重がふえにくい、といった事態におちいっているとのこと。体重をふやすためには、じかに母乳をのませるだけでなく哺乳瓶で搾乳した母乳もあたえましょう、と指示をうけました。うれしいことに、これでわたしも母親気分を味わえちゃいます。それだけでなくかみさんをすこしでも休ませることができるのです。そうすけは親想いだなあ。やさしい息子なのです。

 面談後、沐浴の講習を助産師さんからうけました。お風呂はパパが入れますよね、と、なかば強要されつつ、もちろんわたしが入れますよ、と実習をかってでました。あいにくそでをまくりにくい服を着ていたので、助産師さんの了解をもらって上半身はだかで、それもナースステーションからまる見えになりながらトライしました。お湯が入らないように耳をおさえて、首をささえて、湯船に入れて、ガーゼをつかってやさしく洗って。ボディソープをつかったからだの洗い方やあたまの洗い方も習いました。脇から腕をまわしてからだをささえて背中を洗い、さいごに大事なところの洗い方まで、なんとか合格点をもらいました。からだの拭き方やおへそのケアの仕方も教わりました。デリケートなおへそは一か月健診のころまでていねいにケアするのが大切だそうです。

 昼すぎに退院して、かみさんは一週間ぶりに自宅に帰ってきました。
「やっぱり、おうちはいいねえ。そうすけ、ここが、きみがこれから暮らしていくところだよー」
と、うれしそう。そうすけもリラックス、部屋を気に入ったようです。

 その後、おっぱいタイムのかみさんとそうすけを家にのこして、出生届を出しに区役所へ行きました。残念ながら、区役所はお休みでした。それもそうだよなあ、12月30日だもの。休日受付で出生届の提出だけしました。
「受付はおこないますが審査はこのあとになりますので、年明けにもういちど母子手帳をもってきてくださいね」
二度手間になるなあ、と、ちょっぴりがっかりしたけれど、審査後に子ども手当の申請も出さなくてはならないらしい。だったら、結果的にはみんなも二度役所にいくのだ、と思ったら、なんだかラッキーな気にもなりました。

 帰りに、沐浴の仕方や搾乳したおっぱいのあげ方を習っているときに教えてもらった便利なグッズを百円均一のお店で買って帰りました。沐浴のときにつかう取っ手のついた洗面器、搾乳したおっぱいを湯煎するマグカップ、交換したおむつを捨てる小さめのポリバケツなどなど。これでばっちりです。

 家に帰ると、まさに授乳のまっただなかでした。ほんの2時間程度の外出中に3度も授乳していたんだそうです。そうすけにとってもやっぱり自宅にいるとマイペースでいられるんだ、ということが目の前で実証されました。

12月29日、父さんの夜なべ。(生後5日)

 ただいま、午前4時45分。そうすけとかみさんがいる病室の簡易ベットの上でくつろいでいます。育児支援もかねて深夜のそうすけの様子を観察しようと、病院にお泊まりしているだんなです。このまま、朝まですごします。

 昨晩、かみさんとおなじ病院食をアルコールなしでたべました。うす味の病院食なのでビールがほしくなることもありませんでした。が、社会人になって1年めから1日も休まずのみつづけてきたので、20数年ぶりに休肝日をとることができました。そうすけのためにもこれからたまには休肝日なる日をもうけて、自分のからだは自分で気をつけよう、と思いなおした一夜でした。

 さて、夜のそうすけは、というと。17時30分の長めの授乳のあと、20時、23時、1時、3時と、寝たり起きたりを繰りかえしています。授乳時間は30分くらいでしょうか。あやして寝かしつけるまでの時間も合わせると、トータルで45分ほどのおっぱいタイムになります。授乳のほかにも、23時から1時のあいだにはおむつ交換タイムもあったりして、24日の出産から4日間ずっとかみさんは、授乳とおむつ交換をたったひとりでがんばってきたわけです。想像するだけでも、こりゃ眠れないよなあ、と思います。授乳のあと横になってもすぐに眠ることもできず、瞬間うとうとしたかなと思ったら、また泣き声がきこえるといったぐあいです。かみさんには、大、大、大感謝なのです。

 わたしは、きょうが仕事納め。会社に出て仕事を終えたら、あしたから6日間ぶっつづけでかみさんといっしょに夜のそうすけにつきあえちゃいます。こんなタイミングを選んで生まれてくれたそうすけにも、大、大、大感謝です。

 いまこの日記を読んでいるみなさんも、そろそろわたしの代筆にあきてきたでしょう。あしたはいよいよ退院。退院してからの日記はかみさんにまかせたいと思います。もちろん、からだやこころが疲れてかみさんが休養を必要とするときには、いつでも代筆をするつもりです。ということは、これからもまだまだみなさんにお会いできそうですね。次回をたのしみにしてくださいね。